競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。今回のテーマは「牝馬と外国産馬の皐月賞」です。
14日は3歳クラシックの第1戦・皐月賞(GI)です。
今年の出走馬には牝馬のレガレイラと、外国産馬のシンエンペラーも含まれています。2歳GIホープフルSを牝馬として初めて制したレガレイラと、そのホープフルSと弥生賞ディープインパクト記念で連続2着中で、凱旋門賞馬の弟という血統のシンエンペラー。ともに上位人気が予想される有力馬です。
牝馬や外国産馬がクラシックの皐月賞に出走してくるケースは決して多くありません。
このうち牝馬の皐月賞出走は、2歳戦がなかった太平洋戦争前後では珍しくなく、皐月賞が東京競馬場で行われていた時代には、1947年トキツカゼ、1948年ヒデヒカリと、2年続けて牝馬の皐月賞馬が誕生しています。
しかし、牝馬限定のクラシック路線が整備された現代では、あえて牡馬との対決を選択するのは稀で、1984年のグレード制導入後、牝馬が皐月賞に出走するのは、2017年のファンディーナ以来7年ぶり4頭目です。
▲皐月賞に出走した牝馬(グレード制導入以降)
一方、皐月賞が外国産馬に開放された2002年以降の22年間で外国産馬の出走があったのは9回。のべ14頭の出走がありました。
14頭の生産地の内訳は、アメリカ・12、アイルランド・1、イギリス・1で、今年のシンエンペラーはフランス産馬初の皐月賞出走になります。
▲皐月賞に出走した外国産馬
外国産馬の皐月賞最先着は、2014年アジアエクスプレスと、2020年ダーリントンホールの6着。アジアエクスプレスは朝日杯FSを制した2歳王者、ダーリントンホールはゴドルフィンのニューアプローチ産駒でした。
このうちアジアエクスプレスが出走した2014年は牝馬のバウンスシャッセも出走しており、今年と同じケースでした。牝馬も外国産馬も出走する皐月賞は、この2014年以来10年ぶり2回目です。
では、10年前、2014年の皐月賞は、どんなレースだったのでしょうか。
1番人気は弥生賞を勝って臨んだトゥザワールド(川田)。新潟2歳Sでのハープスターの2着が唯一の敗戦という東スポ杯と共同通信杯の勝ち馬イスラボニータ(蛯名)が2番人気。2歳王者アジアエクスプレス(戸崎)は5番人気、藤沢和雄厩舎のフラワーC勝ち馬バウンスシャッセ(北村宏)は12番人気でした。
レースは、ウインフルブルームが引っ張り、アジアエクスプレス、トゥザワールド、バウンスシャッセらが先行策で追走するという展開の中、中団で脚を溜め、最後の直線で弾けたイスラボニータが前を行く各馬を競り落とし優勝。トゥザワールド2着、逃げたウインフルブルーム3着。外国産馬アジアエクスプレスと牝馬のバウンスシャッセは掲示板に載ることができませんでした。
ディープインパクトの死後、その産駒が1頭もいなくなった初めての世代のクラシックは、牝馬と外国産馬が揃って有力馬として出走するというレアケースになりました。皐月賞を牝馬が勝てば76年ぶり、外国産馬が勝てば史上初。歴史に残る快挙が達成される下地は出来ています。