競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「愛チャンピオンSのみどころ」です。
秋の大目標である凱旋門賞(10/6 パリロンシャン)に向け欧州遠征中のシンエンペラー(牡3/矢作芳人厩舎)が坂井瑠星騎手とのコンビで出走するアイリッシュチャンピオンステークス(G1)が、14日、アイルランド・ダブリン州にあるレパーズタウン競馬場の芝2000mを舞台に行われます。
日本調教馬が愛チャンピオンSに出走するのは、英国に長期滞在して各国を転戦したディアドラが日本調教馬として初のアイルランド競馬参戦を果たした2019年(4着)以来。海外馬券発売が行われるのも5年ぶりです。
アイルランド競馬では毎年9月第2土・日曜日に初日(土曜日)がレパーズタウン競馬場、2日目(日曜日)がカラ競馬場であわせて10の重賞競走を行う「アイリッシュチャンピオンズフェスティバル」(去年、名称が「アイリッシュチャンピオンズウィークエンド」から変更)という開催が行われていて、愛チャンピオンSはその中核を成すアイルランドの中距離チャンピオン決定戦です。
また、10月の凱旋門賞や英チャンピオンSに向けた重要なステップレースでもあり、すでに海外馬券発売が発表されている凱旋門賞を展望する上でも見逃せないのは間違いありません。
さらに今年は、矢作調教師が「前哨戦と言うには失礼なレース。(今年の相手は)凱旋門賞より強いと思う」と話す通り、例年以上の豪華メンバーが揃いました。(情報は11日時点。出馬投票は12日)
まずは、愛チャンピオンSを2019年から去年まで5連覇中で、調教師の連続優勝記録と最多優勝回数記録(12回)も更新中という地元アイルランドのエイダン・オブライエン厩舎。今年は過去最多の5頭を出走させます。
その筆頭はオーギュストロダン(牡4)。ご存知、ディープインパクト産駒の去年の英国ダービー馬ですが、インターナショナルSの時にも触れたように、去年も勝っているこのレースを使ってきました。
今年はドバイシーマクラシック(G1・芝2400m)での大敗後、地元のタタソールズゴールドC(G1・芝2100m)でホワイトバーチ(飛節を痛め今季全休)の2着。6月のプリンスオブウェールズS(G1・芝1990m)では人気に応え勝利したものの、7月のキングジョージ6世&QES(G1・芝2390m)では5着に凡走。不安定な成績が続いています。
大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」は4.0倍の2番人気に評価しているオーギュストロダン。オブライエン師は、愛チャンピオンSの後はジャパンカップ(11/24 東京競馬場)に向かう予定と明言しており、日本の競馬ファンとしては、最低限、プランが白紙にならないような走りを期待したいところ。なお、クールモアの主戦ライアン・ムーア騎手はオーギュストロダンに騎乗する予定です。
オブライエン厩舎の2番手は今年の愛ダービー馬・ロスアンゼルス(牡3)。
デビュー3連勝の後、英ダービー(G1・芝2410m)でシティオブトロイの3着。続く愛ダービー(G1・芝2400m)を快勝し、英インターナショナルS当日の直前に行われたグレートヴォルティジュールS(G2・芝2370m)も勝って、ここまで6戦5勝の戦績です。
オブライエン師は、ここで上位に入れれば凱旋門賞に向かう考えで、同世代のシンエンペラーの強力なライバルということになります。ウィリアムヒルのオッズは8.0倍の3番人気です。
3番手は、ルクセンブルク(牡5)。一昨年のこのレースの覇者です。
今年は中東遠征こそ振るいませんでしたが(ネオムターフC4着、ドバイターフ14着)、2走前、5月末のコロネーションC(G1・芝2410m)で4つ目のG1タイトルを獲得。前走のキングジョージ6世&QESは9頭中6着でした。ウィリアムヒルの評価は15.0倍ですが、一昨年制したこのレースでは去年も2着に入っており侮れません。
さらに、去年の英セントレジャー勝ち馬・コンティニュアス(牡4)も名を連ねました。
パカパカファーム生まれのハーツクライ産駒は、去年秋、ジャパンカップ直前に歩様が乱れ来日を断念。今年は6月のロイヤルアスコット開催のG2ハードウィックS(芝2390m)で復帰すると(5着)、前走は先月カラで行われたG3ロイヤルホイップS(芝2000m)で自身4回目の重賞勝ちを果しています。ウィリアムヒルのオッズは17.0倍です。
また、先月のインターナショナルS(G1・芝2050m)にも出走していたハンスアンデルセン(牡4)もラインナップ。前走では優勝したシティオブトロイが逃げるという展開になりましたが、今回こそはラビット(ペースメーカー)役を務めることになりそうです。
しかし、そんなA・オブライエン軍団以上にブックメーカーから評価されているのが、エコノミクス(牡3/英国W・ハガス厩舎)です。
去年のデビュー戦こそ敗れましたが、今年4月に初勝利した後、英国ダービー前哨戦ダンテS(G2・芝2050m)を6馬身差の圧勝。ダービーの有力馬と目されたものの、本格化の時期を見据えて本番には出走せず、前走はフランスに遠征して、先月のギョームドルナノ賞(G2・芝2000m)で豪快な差し切り勝ちをおさめました。
トム・マーカンド騎手が主戦を務める3連勝中の素質馬の評価はG1初挑戦ながら非常に高く、ウィリアムヒルのオッズは2.1倍の1番人気です。
ウィリアムヒルの4番人気はゴーストライター(牡3 英国C・コックス厩舎)です。
日本で馬券発売も行われた先月のインターナショナルSでシティオブトロイ、カランダガンに次ぐ3着と馬券に絡んだのは記憶に新しいところ。今回も今年1~2月に短期免許で来日したR・キングスコート騎手がパートナーを務める欧州のハイレベル3歳世代の1頭です。
さて、日本のシンエンペラーですが、ウィリアムヒルでは13.0倍の5番人気となっています。
帯同馬のラファミリア(牡3/矢作芳人厩舎/藤田晋オーナー/1勝クラス)とともに、フランス・シャンティイの清水裕夫厩舎に入って調整中のシンエンペラー。現地では、兄ソットサスの鞍上だったC・デムーロ騎手が跨って追い切りを行ったり、パリロンシャン芝2400mコースを使って調教したりと、大目標である凱旋門賞も見据えての調整が進められているようです。
なお、愛チャンピオンSが行われるレパーズタウン競馬場は左回り。芝2000mのコースは、向正面右奥のコーナー半ばからスタートし、その後は800mほどある向正面の直線に入ります。しばらくは平坦が続きますが、残り1400m辺りから少し上って3コーナーと4コーナーへ。再び少し上りになる4コーナーを抜けた最後の直線(400mほど)はゴールまでだらだらと上り坂が続きます。勾配はあまり大きくないものの、後半に上り坂が多いのが特徴です。
レースは日本時間の14日(土)の23時25分発走予定となっており、14日(土)23時からグリーンチャンネルで放送される中継では私が進行を務めます。番組ではシンエンペラーの帯同馬ラファミリアが出走を予定しているキルターナンステークス(G3・芝2400m)もライブで中継する予定です。
シンエンペラーの走りはもちろん、秋の大舞台に向けて要注目の愛チャンピオンS。ぜひご覧ください!
▼9月14日(土) 23:00~24:30
2024愛チャンピオンS中継