競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは日本からプログノーシスが出走するコックスプレート(豪GI)の見どころです。
オーストラリアのムーニーバレー競馬場で26日に行われるコックスプレート(G1 芝2040m)に、中内田充正厩舎のプログノーシス(牡6)がダミアン・レーン騎手とのコンビで出走。日本での海外馬券発売が行われます。
コックスプレートは、春シーズンを迎えているオーストラリアの上半期における中距離チャンピオン決定戦です。舞台のムーニーバレー競馬場は左回りの芝コースで、1周1805mの長方形型の周回コース。
コックスプレートが行われる2040mのコースは、スタート地点とゴール地点がともに短い辺にあるため、スタートしてから最初のコーナーまでが200m弱、最終コーナーからゴールまでの最後の直線はわずか173mしかありません。
また、最初のコーナーを過ぎて2コーナーまでは約5mの下り、逆に3コーナーから最終コーナー半ばまでが約5mの上り坂です。勝利には、短いホームストレッチと傾斜のあるカーブという独特のコースを克服することが必要です。
それでは、9頭立てで行われる今年のコックスプレートの有力馬を、大手ブックメーカーウィリアムヒルのオッズを参考に紹介します(情報は10/23現在)。
堂々の1番人気は日本のプログノーシス(馬番2番/ゲート番5/59キロ)で3.25倍です。
3度の香港遠征に続いて、4回目の海外でのレースとなるプログノーシスは、GIIのタイトルを3度手にしているものの、GIのタイトルには手が届いていません。香港のクイーンエリザベスII世Cでは2年連続の2着。その勝ち馬はいずれも去年のコックスプレートを制したロマンチックウォリアーですから、1番人気の評価も当然です。
カギはやはりコース形態。5年前、日本のリスグラシューでコックスプレートを制したダミアン・レーン騎手がどう乗るのでしょうか。なお、過去10年のコックスプレートでは、現地1番人気馬が7勝、2着2回、3着1回と圧倒的な成績を収めています。
2番人気は5.0倍で南半球産の3歳牡馬ブロードサイディング(馬番8/ゲート番8/49.5キロ)。
ゴドルフィンオーストラリアの生産で、ゴドルフィンが所有するトゥーダーンホット産駒。管理するのはメルボルンカップを史上最多の12回も制したバート・カミングスを祖父に持つ名門一家の若きトレーナーで、オーストラリアにおけるゴドルフィンの専属調教師ジェームズ・カミングス調教師です。
今年4月の初勝利から3つのGIを含め5連勝していましたが、今月12日の前走コーフィールドギニー(3歳限定GI 芝1600m)では、単勝1.8倍に支持されたものの、スタート直後の不利から後手を踏み、逃げ馬有利の展開の中、4着に敗れました。
ブロードサイディングがこれまでに走ったレースは1600mが最長ですが、予定通りコックスプレートに挑戦。今回の鞍上はオーストラリアを代表する女性騎手ジェイミー・カーです。なお、負担重量は49.5キロで出走できる南半球産3歳馬は、近年2013年のシェイムスアワードや2009年のソーユーシンクが優勝しています。
3番人気は6歳牝馬ヴィアシスティーナ(馬番7/ゲート番4/57キロ)で5.5倍です。
ファスネストロック産駒のアイルランド産馬。5歳シーズンまでは英国を拠点にし、去年7月のプリティポリーS(カラ 芝10F)でGI初勝利を飾ると、1年前のGI英チャンピオンS(アスコット芝2000m)でもキングオブスティールの2着に入るなどの活躍をしていました。
今年からオーストラリアに移籍し、コックスプレート4連覇など世界記録のGIレース25勝の名牝ウィンクスを手がけたクリス・ウォーラー調教師が管理しています。
移籍後はすべてGIを5戦して3勝。今月5日に行われた前走ターンブルS(GI 芝2000m)ではD・レーン騎手と初コンビを組み、道中は中団から進出すると、先週のコーフィールドCでも2着だったバッカルーとの追い比べを制して勝利しました。
今回は去年のコックスプレートをロマンチックウォリアーで制したジェームズ・マクドナルド騎手の手綱に戻る予定ですが、22日朝の調教でJ・マクドナルド騎手が落馬し、カラ馬のままコースを約3周するアクシデントが発生。人馬とも無事ということですが、出否はレース当日の朝に最終判断するということで、ブックメーカーの評価を少し下げています。
4番人気はプライドオブジェニ(馬番6/ゲート番7/57キロ)で6.0倍です。
プライドオブドバイ(その父ストリートクライ)産駒のプライドオブジェニは、自身24戦目となる去年11月のエンパイアローズS(芝1600m)がGI初勝利にして重賞初制覇だったという遅咲きの7歳牝馬。
続くカンタラS(芝1600m)も勝ってGIを連勝すると、4月の下半期中距離チャンピオン決定戦クイーンエリザベスS(芝2000m)では、道中、後続を30馬身ほど引き離すという歴史に残る大逃げを見せ、2着馬に6馬身半差をつけて圧勝。昨シーズンのオーストラリア年度代表馬に選ばれました。
前走は先週19日のGI・キングチャールズ3世S(芝1600m)に出走。この日も軽快に逃げましたが、最後に捕まり2着でした。そこから中6日でのコックスプレート初参戦となります。
主戦のデクラン・ベイツ騎手は前走後「(今回は1600m戦だったが)2000mで彼女を捕まえるのは簡単じゃないよ」と話しており、レース展開のカギを握る意味でも最注目の存在です。
そのほか、クレイグ・ウィリアムス騎手が主戦を務め、去年のコックスプレート2着、4月のクイーンエリザベスSはプライドオブジェニ、ヴィアシスティーナに次ぐ3着だった6歳騙馬ミスターブライトサイド(馬番1/ゲート番2/59キロ)が11.0倍のオッズで5番人気。
前走は国内馬券発売も行われた8月のGI・インターナショナルS(ヨーク芝2050m)に女性騎手ヘイリー・ターナーとのコンビで出走し7着。今回はブレイク・シン騎手との新コンビで参戦する英国調教の4歳牡馬ドックランズ(馬番5/ゲート番1/59キロ)が13.0倍の6番人気。
2週前の3歳GI・コーフィールドギニーで3着とブロードサイディングに先着、今回はカリス・ティータン騎手とコンビを組む3歳騙馬エヴァポレイト(馬番9/ゲート番6/49.5キロ)が17.0倍の7番人気となっています。
コックスプレートが国内で馬券発売されるのは、リスグラシューとクルーガーの2頭が出走してリスグラシューが優勝を果たした2019年以来5年ぶりとなります。“伝説が生まれるレース(The Race Where Legends Are Made)”というキャッチフレーズもつけられているコックスプレート。発走は26日土曜15時10分(日本時間)です。