競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「無敗の皐月賞馬」です。
日曜日は皐月賞です。今年の出走馬ではクロワデュノール(栗東・斉藤崇史)に最も注目が集まっていますが、3戦3勝のクロワデュノールが勝てば「無敗の皐月賞馬」が誕生することになります。
皐月賞過去84回の歴史上「無敗の皐月賞馬」は20頭います。誕生する確率は23.8%。一方「無敗のダービー馬」は過去90回で11頭誕生していて、確率は12.2%です。
「無敗の皐月賞馬」20頭のうち、1939年の第1回(当時は「横濱農林省賞典四歳呼馬競走」)からグレード制導入前1983年までの44年では9頭が誕生しています。9頭の中には、キャリア2戦目で優勝した1941年のセントライトや1964年のシンザン(キャリア6戦目)、地方6戦6勝・中央2戦2勝の戦績で勝利した1973年のハイセイコー、キャリア4戦目で制した1976年のトウショウボーイなどが含まれます。
1984年のグレード制導入後では、グレード制導入初年度にシンボリルドルフ(キャリア5戦目)が無敗で制して以降、去年のジャスティンミラノまで11頭の「無敗の皐月賞馬」が誕生しました。
このうち1980年代にはシンボリルドルフの翌年にミホシンザンが3戦3勝のキャリアで皐月賞を制し、2年連続で「無敗の皐月賞馬」が誕生。1990年代も1991年のトウカイテイオー(5戦目)と1992年のミホノブルボン(5戦目)が2年連続で「無敗の皐月賞馬」になりました。
その後、2001年にアグネスタキオン(キャリア4戦目)、2005年にディープインパクト(キャリア4戦目)が無敗で皐月賞を制し、「無敗の皐月賞馬」は10年に2頭のペースで誕生していましたが、ディープインパクトが出た後、2019年のサートゥルナーリア(キャリア4戦目)までは13年間の空白期間がありました。
ところが2019年のサートゥルナーリア以降は一気に増え、2020年のコントレイル(キャリア4戦目)と翌年のエフフォーリア(キャリア4戦目)が2年連続、2023年のソールオリエンス(キャリア3戦目)と去年のジャスティンミラノ(キャリア3戦目)も2年連続で「無敗の皐月賞馬」になり、最近6年間では5頭までもが無敗で皐月賞を制しています。加えて近年はレースキャリアが少なくなっているのも顕著な特徴です。
さて、今年はクロワデュノールと同じくエリキング(栗東・中内田充正)にも「無敗の皐月賞馬」となるチャンスがあります。エリキングもキャリアは3戦3勝でクロワデュノール同様4戦目ですが、20頭の「無敗の皐月賞馬」のうちキャリア4戦目で皐月賞を制した馬は7頭(グレード制導入後は6頭)と最も多くなっています。
骨折休養明けのエリキングは前走が去年11月23日の京都2歳S(GIII)で今回は「中147日」です。歴代の皐月賞馬で前走からのレース間隔が最も長かったのは2020年コントレイル(前走ホープフルS)の「中112日」なので、もし勝利すれば約ひと月分更新することになります。なおホープフルS以来となるクロワデュノールの皐月賞までのレース間隔はコントレイルとまったく同じ「中112日」です。
もう1頭、賞金順ギリギリで出走するジーティーアダマン(栗東・上村洋行)にも「無敗の皐月賞馬」になる資格があります。2戦2勝のキャリアは一昨年のソールオリエンス(京成杯1着)、去年のジャスティンミラノ(共同通信杯1着)と同じですが、ジーティーアダマンはL・すみれS勝ちはあるものの重賞は未勝利です。
過去10年では2015年のドゥラメンテ(共同通信杯2着)と2018年のエポカドーロ(スプリングS2着)の2頭が重賞未勝利で皐月賞を制していて、“重賞未勝利で「無敗の皐月賞馬」”になったのは1991年のトウカイテイオー(若葉S1着)が最後となっています。ちなみにジーティーアダマンは“母の父マンハッタンカフェ”です。
日曜日の皐月賞。果たして85代目の皐月賞馬は史上21頭目の「無敗の皐月賞馬」でしょうか? それとも・・・?