プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“「陣営コメント」をどう扱うか”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
ジャパンカップは東京芝2400mで施行。初角までの距離は350mほどで、先行争いにおいて内外の有利不利はありませんが、頂上決戦となるため、ロスが少ない内がベターではあるでしょう。
登録20頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは5頭。最終的には18分の5、先行馬占有率は28%になるでしょう。ただ今回は、タイトルホルダーとパンサラッサという稀代の逃げ馬2頭が相まみえます。先行馬割合自体は低くともペースが引き上がる可能性はありそうです。
今回の注目は何といっても、イクイノックスとリバティアイランドの初対決。かたや天皇賞(秋)で1.55.2の超レコードを樹立、もう一方は圧倒的なパフォーマンスで牝馬三冠を達成という充実ぶりです。
イクイノックスは某大手サイトの想定オッズが1.3倍。フルゲートのG1でこのオッズが見合うことはあまりないので、一般的には◎は打ちにくいところ。ただ、前走のパフォーマンスは圧倒的ですし、この馬を1着に固定した馬単や3連単という戦略も十分にありだと思います。例えば、3連単1着固定で2列目を絞ることができれば、期待値の見合う買い目は組むことができるでしょう。
リバティアイランドは古馬一線級との初対戦。相手との着差や力関係を加味すると、現時点ではイクイノックスのほうが上かなという印象はあります。ただ、斤量差4キロのアドバンテージが絶妙で、ここに逆転の可能性を見出すことも。いずれにせよ、とんでもない相手が待ち受けるジャパンカップに出て、盛り上がりに一役買って出てくれた陣営には感謝したいですね。
タイトルホルダーとパンサラッサが同じレースに出た場合、2戦ともタイトルホルダーが先着しています。その2戦とも結果的に差し馬の台頭を誘発しているので、その観点からは、前走7番手からイクイノックスと0.6秒差だったダノンベルーガが面白そう。2走前のように道中でまくる脚もあり、人気を落とすなら今回が狙い時では?
ペースが上がって消耗戦になれば、ディープボンドの豊富なスタミナが生きてきます。天皇賞(秋)で差してきたジャスティンパレスのようなイメージですね。
いちファンとして最強馬決定戦を楽しみにしていますが、馬券的にも面白い一戦だと思っています。それこそ、ウマ娘にタップダンスシチーが実装されて盛り上がっていますが、今年だって、後続が牽制しあえば、2003年のジャパンカップのような逃げ切り劇があるかもしれませんよ。
【枠順確定後注目馬】
1 リバティアイランド
2 イクイノックス
3 タイトルホルダー
5 ドウデュース
10 ダノンベルーガ
17 スターズオンアース
牝馬3冠リバティアイランドとレーティング世界一のイクイノックス2強ムードのジャパンカップ。他にもメンバーを見渡すと2冠牝馬、GI3勝馬、海外芝ダートGI馬、同レース去年の覇者など類を見ないレベルのジャパンカップ。
自分の競馬人生の中でも最強と思わせるレースを見せてくれるイクイノックスだが、一筋縄では行かないメンバー構成で2倍台の馬連をで期待値があるのかどうか。ここは強いと認めつつも穴狙いを敢行。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
■みねたの金言107
「陣営コメント」をどう扱うか
★ピックアップレース★
11月11日 東京11R 武蔵野S(ダート1600m良)
◎12レッドルゼル
○7タイセイサムソン
▲3ドライスタウト
△16ペースセッティング
☆1ペリエール
注2ベルダーイメル
[参考買い目]
単 勝 12
ワイド 12 – 7、3、16
馬 連 12 – 7、3、16、1、2
3連複 12 – 7、3、16 – 7、3、16、1、2
──11月11日の土曜日は、武蔵野Sで◎レッドルゼルが5番人気3着、デイリー杯2歳Sで◎エンヤラヴフェイスが8番人気2着と好走しましたが、ここでは武蔵野Sを振り返りたいと思います。
みねた:レッドルゼルには買い材料がたくさんあったので、このコラムや書籍を読んでいただいている方は、誰でも導き出せたと思いますよ。
──ここで、コラムの読者には馬柱をみながら一旦考えていただいて……では、答え合わせをお願いします。
みねた:シンプルに、同じ東京ダート1600mで行われた今春のフェブラリーSで2着に好走しています。そして、初角まで距離が長い「コースパターンF」のコースで6枠12番という外枠。揉まれることなく、芝部分を長く走れるので有利ですよね。さらに極めつきは「逃げハサミ」。しかも、自身のすぐ内側が逃げ候補ですから、スムーズにレースの流れに乗りやすい並びでした。
──教科書に載せたいような、まさに理想の買いパターンだったのですね。
みねた:にもかかわらず、朝4時の段階で5番人気という低評価。最終オッズも11.5倍という、非常に甘いオッズだったのです。競馬新聞の予想オッズを見た時は「こんなにつくの?」と半信半疑で、実績的に5倍前後に落ち着くのでは?と見込んでいました。
──たしかにG1のフェブラリーSで3番人気2着だった馬が、同条件のG3で5番人気というのは不思議な感じがします。でも、これには明確な理由があって、陣営のコメントが弱気だったんです。私の手元にある競馬新聞でも、安田助手が「好調期のような威圧感がない。今回は能力が頼り」といった談話を出しており、専門紙の記者の印も薄め。正直、私もそれをみて、評価を下げてしまいました……。
みねた:薄い印や弱気なコメントをみて、消すための理由にしてしまう人が多いのでしょうね。特に重賞になると、その傾向が強くなるのかもしれません。
結局、能力と状態とオッズのバランスなんですよね。私も、弱気なコメントは目にしましたが、それでこんなに人気が下がるなら『ありがてぇ』と思いました(笑)。この馬の能力から八分の仕上げで勝負になるでしょうから、それで11.5倍なら十分過ぎると判断したわけです。
──ちなみに、みねたさんは“馬の状態面”というファクターはどのように考えていますか?例えば、今回のような陣営コメントの扱い方とか。
みねた:状態面を判断する材料にはなりますが、馬券に生かすための定量化が難しいですよね。武蔵野Sの場合も、それぞれの陣営がコメントを出していますが、その判断基準は人それぞれじゃないですか。どんな時でも強気一辺倒の調教師や助手さんもいれば、反対に桂小五郎みたいに、基本的にぼやきから入るような人もいる。
──競馬で例えてくださいよ(笑)。個人的な印象ですが、木村調教師なんかは慎重派で、どちらかといえばネガティヴ寄りのコメントが多いですが、それでもレースではちゃんと走るケースが多い印象があります。
みねた:ですから、馬券に生かすとすれば、「この人のコメントにこのフレーズが入っていたら面白い」みたいな形が良いかもしれませんね。ただそれでも、未勝利戦と重賞では違ったりもするでしょうから、形にするためにはかなりの労力が必要に思えます。
──状態面の話でいえば、聞きたいことがありました。エリザベス女王杯のジェラルディーナはパドックでイレコミが目立っていたのですが、こういう時に、予想を変えるか変えないかの判断が難しいなと思って。
みねた:自分は予想家の立場で事前予想を出しているので、買う金額を下げるぐらいだと思います。制約の無いファンの立場なら、◎を変えるのはアリですよ。自分の相馬眼に自信があって、元々◎だった馬に走られてしまっても後悔しない気持ちの強さがあるなら、変えるべきだと思います。
──エリザベス女王杯の時は、パドック解説の細江純子さんも辛い評価だったので、変えるべきか、そのままでいくかめちゃくちゃ悩みました。
みねた:その判断も、陣営コメントの話に通じますね。細江さんのパドック解説をどれだけ聞いているか、ということです。普段から細江さんのパドック診断を聞いていて、よく当たると思っているなら、ジェラルディーナの評価を下げたらいいと思います。一番ダメなのは、たまたまパドックで隣にいたオジさんの『この馬はダメだ』という評価を鵜呑みにしてしまうパターンです(笑)。
──たしかに、見ず知らずの人の何気ない一言が、妙に気になっちゃうことがあるんですよね。この流れで聞きたいのは、「いつ馬券を買うべきか」というお話です。ジェラルディーナの件は、前売りで馬券を買ってしまっていたら、どうしようもありません。先週のナミュールの乗り替わりも同様です。
(次回に続く)