プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“「先行馬占有率」と狙い方(1)”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
5月19日 東京11R オークス 芝2400m
オークスは東京芝2400mで施行。初角となる1コーナーまでは約350mで、先行争いによる内外の有利不利はそれほど大きくありません。とはいえ、トップクラスの馬たちが争うG1レースなので、基本的にはロスの少ない内枠有利と考えてよいでしょう。
登録18頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは6頭。先行馬占有率33%だと、極端な追い込み脚質は厳しいかもしれません。
1番人気想定はステレンボッシュ。桜花賞前の当欄でも阪神JFのレース内容を高く評価したように、元々、世代トップクラスと睨んでいた馬で、桜花賞制覇は納得の結果でした。阪神JFが11-10、桜花賞が11-8と後方から押し上げて伸びており、距離延長に不安はないでしょう。強いて不安を挙げれば乗り替わりぐらいで、ほぼ隠れている要素のない人気馬。好走確率は高いでしょうが、圧倒的な1番人気が濃厚で期待値は控除率通りの80%ぐらいだとみます。
ステレンボッシュを負かしうる馬を探して◎を打つとなると、ステレンボッシュより後方にいては難しいでしょう。先行して位置取りの差を生かせるタイプか、道中の機動力を生かして出し抜けを図れそうなタイプに注目です。
先行タイプからはフローラSの上位2頭に注目。3-4-4と先行して2着に粘りこんだラヴァンダの11番人気66.0倍は甘く、期待値は見合いそう。前走は道中で一旦ためる形でしたが、変に脚をためずに先行すれば、チャンスは広がるでしょう。
勝ち馬のアドマイヤベルは5-6-6とラヴァンダのすぐ後ろから差した形。前哨戦のG2を勝ちながら7番人気17.2倍なら妙味はあります。
タガノエルピーダは忘れな草賞が4-4-4-1と離れた4番手から前3頭を一気に飲み込む強い内容。2000mで結果を残している点も心強く、ステレンボッシュより先に動く形を作れるなら面白い存在です。
脚質は合わずともオッズに目がいくのはフラワーC組の2頭です。勝ち馬のミアネーロの8番人気24.9倍、2着馬ホーエリートの14番人気94.4倍。ともにステレンボッシュと同脚質というのは歓迎できない材料ですが、このオッズなら。
桜花賞の3着馬ライトバック、4着馬スウィープフィートはともに極端な追い込み脚質の点がどうか。桜花賞で人気を裏切ったクイーンズウォーク、チェルヴィニアは、距離延長や叩き2戦目での上積みがありそうですが、大敗の割に人気が落ちておらず買いにくいところで、川田騎手、ルメール騎手がどこまで立て直すか。
全馬芝2400m未経験で未知な部分は大きく上位人気馬が後ろから行く脚質でもあり波乱要素は十分。並び、実際のオッズをしっかりと見て馬券は決めたいですね。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言130
「先行馬占有率」と狙い方(1)
★ピックアップレース★
4月21日 福島12R 4歳以上1勝クラス ダート1700m
◎4ヒルズカーン
○3スマートハンター
▲9トゥルース
△6ジャクソン
☆1フロスティクォーツ
注5メレカリキマカ
[参考買い目]
単勝 4 2000円
ワイド 4-3 3000円
馬連 4-3.9.6.1.5 各500円
3連複 4-3-9.6.1.5 各600円
―今回は◎4ヒルズカーン→○3スマートハンターで決着した4月21日福島12Rを取り上げます。単勝2000円×4.7倍、ワイド3000円×2.5倍、馬連500円×7.5倍の的中で、回収率としては200%程度ですが、馬券の組み方が興味深く、色々聞いてみたいと思いまして。
みねた)3連複の2頭軸を採用していることからも、2頭に絞れていることがわかりますよね。ただ、振り返ってみると馬券の組み方という意味では詰めが甘かった部分もあったので、その辺りはおいおいお話ししていきましょう。
―ではその「2頭に絞れた」という思考から教えてください。
みねた)これは基本中の基本である「先行馬のカウント」ですね。このレースで前走の通過順位に3番手以内があったのは3スマートハンターと8ヴェッキオカズマの2頭だけ。先行馬占有率は22%しかありません。しかも8ヴェッキオカズマは笠松競馬場で記録したものなので、中央のペースで先行できるかは疑わしいところ。そう考えると、実質的には「逃げイチ」というレースでした。
―唯一の先行馬が1番人気の3スマートハンター。
みねた)要するに「強い先行馬」ですよね。「強い先行馬」というのは、展開予想の起点になりやすいということをこれまでにもお話ししてきたかと思います。「強い先行馬」が進路を作りながら抜け出すので、ライバルはその馬を目標にすればいい。このレースなら、3スマートハンターを目標にして、ゴール前で3スマートハンターを差すことだけを考えればいいのです。
―ということで、◎が4ヒルズカーンでした。
みねた)「強い先行馬の外」。これも基本ですね。強い先行馬が切り拓いた進路をなぞる形で追走して、抜け出した強い先行馬を最後に差す。先行馬に限らず、強い馬の外が恵まれるのは基本で、23年宝塚記念の5イクイノックス→6スルーセブンシーズなどは典型例です。
―予想文でも「予想の中心は3スマートハンターの先行力」と書かれていて、予想の起点が3スマートハンターにあったことは明白ですが、シンプルに◎3スマートハンターとはならないのですね。
みねた)その世界線はありませんね。先行馬をカウントして、先行馬占有率が低かった場合、そのまま先行馬を狙うのは人気薄のケース。いわゆる「ナメられ逃げ」狙いです。先行馬占有率が低いレースで人気馬が先行馬の場合は、ナメられるよりも目標になります。先行馬自体は少ないので激流に巻き込まれるケースは少ないものの、全馬から目標にされた結果、スムーズに流れに乗った馬に差されてしまうことが多くなります。ですから、馬券的にはスムーズに流れに乗れそうな馬を探すのが得策。
―スムーズに流れに乗れそうな馬=4ヒルズカーンだったわけですね。
みねた)「強い先行馬」と「その外の馬」という組み合わせで、3-4という組み合わせの期待値はかなり高いレースでした。馬単体の期待値を考慮することはできても、「期待値の高い組み合わせ」にまで思いを馳せるのは容易ではありません。その結果、一見、期待値の取れそうにないレースでも、「組み合わせ」で考えれば期待値を取れることがあって、実際、このレースも9頭立てですが、「厳選勝負レース」に選んでいます。ただ、◎○2頭軸までしっかりたどり着いたのであれば、このレースは4→3の馬単は押さえておかねばなりませんでしたね。反省材料です。
―詳しく説明していただけますか?
みねた)2頭の組み合わせの期待値が高く、3スマートハンターは1着の期待値は低いものの、大きく沈む可能性も極めて低い。4ヒルズカーンが好走するのは想定通り3スマートハンターがゴール前まで粘っているケースですから、4→3の組み合わせだけは馬単を推奨すべきでした。
―ワイドを厚くした買い目の意図についても教えてください。
みねた)そこは的中率の担保という意味合いが大きいですね。2頭の期待値が高いとはいえ、1、2着の馬券は、ちょっとした勝負の綾でブレる可能性があります。このレースは、無印にした2番人気の7セブンスストリートが3着で3連複は不的中だったのですが、中央再転入の2番人気馬は「消し」で正解だったと思っています。とはいえ、今回のように走られてしまうケースもあります。仮に7セブンスストリートが2着だったとしても、ワイドを厚めにしておけば保険になりますよね。このレースの場合、期待値に全振りするなら馬単1点。的中率とのバランスを考えた配信の買い目であれば、馬連の部分を馬単にした上で、ワイドを保険にするというのが正着だったように思います。
―先行馬占有率の低いレースの狙い方から馬券の買い方まで、学びの多い内容でした。次回は逆に「先行馬占有率の高いレース」の例として、福島牝馬Sについて取り上げたいと思います。
みねた)それはいいですね。今回のものと併せて読めば、「先行馬のカウント」からの予想の組み立てが整理できるはずですよ。