プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“重賞で期待値がとりやすい理由(前編)”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
6月23日 京都11R 宝塚記念 芝2200m
いよいよ今週末は春のグランプリ・宝塚記念。今年は京都芝2200mでの施行となります。初角となる1コーナーまでは400m弱なので、先行争いにおいて内外の有利不利はありません。
登録13頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのはディープボンド、ドウデュース(前走海外のため有馬記念でカウント)、ベラジオオペラ、ローシャムパークの4頭。
1番人気想定はドウデュース。京都競馬場には武豊騎手が似合いますね。想定2.4倍と、前走ドバイターフ敗退を挟んでいますが、人気を落とす気配はありません。このメンバーで実力上位なのは疑いようがなく、先行馬がそれほど多くない組み合わせなので、自分で動いていける脚質もプラス。ただ、2.4倍ほどの信頼度があるかというと、どうでしょうか。
2番人気想定はジャスティンパレス。持ち人気が高くないので、期待値を取りやすいタイプの競走馬です。近走で位置取りが後ろ過ぎる点は懸念材料ですが、今回は鞍上にルメール騎手を迎えます。同馬はルメール騎手とのコンビでは4戦4勝。「騎手の腕」を感じざるを得ない完璧な成績ですね。ドウデュースとの比較で、この馬の単オッズ4.1倍は甘めに感じます。
3番人気想定のローシャムパークは、前走の大阪杯で13-12-2-2(2着)という強烈な捲りをみせました。間違いなく能力自体は高いでしょう。機動力があるので、大敗するシーンはあまり浮かびません。
上位人気が全て序盤は後方に構えるタイプだけに、2-2-2-2から大阪杯を押し切ったベラジオオペラの安定感に目が向きます。先行=目標にされやすいのは事実なので、ここは捲りタイプの追撃を凌げるかが見もの。ベラジオオペラが捲りを受けて沈む展開なら上位人気馬が複数馬券に絡みそうで、逆にベラジオオペラが残す流れになると波乱の可能性が高まります。
有力馬の捲りを利用する形での穴が期待できそうなのがシュトルーヴェ。G2連勝ならば、格負けすることもないでしょう。
プラダリアは2走前にベラジオオペラに先着。京都コースでG2を連勝しており、8番人気20.3倍はかなりナメられている印象です。
ブローザホーンは天皇賞(春)2着ながら、ここも手頃な人気に落ち着きそう。天皇賞(春)で好走していながら、続く宝塚記念でも人気が上がりきらないところは、どこかヒシミラクルを思わせます。
「買い時」という点ではソールオリエンス。2走前の中山記念では1番人気に推されていた馬で、ここの9番人気は人気を落とし過ぎの感があります。とにかく不器用でハマり待ちのところはありますが、だからこそ人気の無い時に買いたいタイプともいえます。
最初に出馬表を眺めた時は、頭数も少なく、あまり気乗りがしませんでしたが、分析していくと人気上位馬に逆らう余地もあって、検討し甲斐のあるレースのように思えます。もちろんグランプリレースなので好きな馬を買うも良し。春G1の締めくくり、しっかり楽しみましょう。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言135
重賞で期待値がとりやすい理由(前編)
★ピックアップレース★
6月9日 函館11R 函館スプリントS 芝1200m
◎13ビッグシーザー
○10ウイングレイテスト
▲4サトノレーヴ
△14セッション
☆11ジャスティンスカイ
注6シナモンスティック
[参考買い目]
単勝 13
ワイド 13-10.4.14
馬連 13-10.4.14
3連複 13-10.4.14-10.4.14.11.6
―今週取り上げるのは6月9日に行われた函館スプリントS。▲○◎で決着し、参考買い目はワイド6.5倍&21.1倍、馬連34.7倍、3連複70.8倍の的中となりました。このレースを取り上げたのには理由があって、見解文が興味深かったんですよ。以下に引用します。
[見解]
スタートから3コーナーまでの距離約490m。先手争いでは内外の有利不利は少ないコースレイアウト。本命は13ビッグシーザー。前走高松宮記念は6番手追走から早め交わされる展開から最後まで良く粘り込んでいた。戦って来た相手を考えるとここで8倍付いているのはオッズ的にはかなり甘く馬券の軸として期待値は高い。10ウイングレイテストもスワンステークス勝利の実績が有りながら17倍なら。高配当に期待したい。
みねたさんの見解文には「先行馬のカウント」「枠の並び」のいずれか、または両方が含まれていることがほとんどなのですが、函館スプリントSの見解文には書かれていませんでした。
みねた)それだけ、並び云々よりも期待値的に魅力のある馬がいたということですよね。見解文で触れた通り、13ビッグシーザーの8倍、10ウイングレイテストの17倍は、非常に魅力的なオッズでした。
―出馬表を見た時、並び的には逃げハサミかつ内目の枠をひいた4サトノレーヴや7シュバルツカイザーあたりに◎を打つのかなと思っていました。
みねた)スプリント戦で2走連続1秒差以上負けの7シュバルツカイザーは◎にするのは心許ないですが、おっしゃる通り4サトノレーヴは◎候補ではありますよね。逃げハサミなのはもちろん、1番人気の逃げ馬の外という流れは非常に有利で、ほぼスムーズな競馬が約束されていますから。それでも、13ビッグシーザーや10ウイングレイテストを上位に評価したのは、「実績が違うのにこのオッズだから」に尽きます。このレースでいえば、最初に出馬表を眺めた段階で、「一番人気は13ビッグシーザーだろうな」と考えていました。2走前には不利がありながらG3で2着、前走のG1高松宮記念も早めに交わされる苦しい展開ながら0.9秒差に踏みとどまりました。ざっくりと、この馬は3倍台のオッズかなと想像していたわけですが…。
―蓋を開けてみたら約8倍(最終オッズは7.6倍)。
みねた)それなら、シンプルに強いと思う13ビッグシーザーでいいですよね。このレースで1番人気(2.3倍)だったアサカラキングは重賞未勝利で前走OP勝ち、2番人気(3.6倍)だった4サトノレーヴは重賞未勝利で前走リステッド勝ち。13ビッグシーザー(7.6倍)は重賞こそ勝っていないものの、OP以上を4勝しており、前走G1で僅差。オッズとのバランスを考えれば断然ビッグシーザーです。では「なぜ、こういうオッズになったのか」ですが、それはこのレースが重賞だからでしょう。
―クラス分けに要因があるということでしょうか?
みねた)そういうことです。条件戦レベルだと、基本的にステップにバラつきが少なく、前走同クラスの馬と昇級組、そこにたまに格上挑戦帰りが加わるぐらいですが、重賞は違います。函館スプリントSにしても、以下に示す通り、出走馬の前走のクラスは多岐にわたっていました。
3勝クラス:1頭
オープン:4頭
リステッド:4頭
G3:2頭
G2:1頭
G1:3頭
海外:1頭
―今回と同条件である前走G3組が2頭しかいないんですね。
みねた)重賞になると、さまざまなステップが入り乱れるため、「格」という要素が重要度を増してきます。実際、当コラム冒頭の週中展望でも、「前走オープンからの格上げで」とか「今回はG1からG3に下がるので」といった言及も多いかと思います。重賞になると「枠」「並び」といった要素だけでなく、出走馬の対戦比較・能力比較も重要で、一言でいえば、考えることが多くて難しい。その結果、その馬の能力と乖離したオッズが発生しやすく、競馬を知っている人間にアドバンテージが生まれます。期待値をとりやすくなるということですね。重賞は「厳選勝負レース」には選択できませんが、「厳選勝負レース」以上に妙味のあるレース、アツいレースがあるので、ユーザーの皆様にはしっかりチェックしていただけるとありがたいですね。
―条件戦は「枠」「並び」といったみねた理論を活用するためのテスト、重賞は総合的な馬券力が問われる推理ゲームといった感じですかね。
みねた)そうかもしれませんね。このレースでは、10ウイングレイテストにも期待値があり、それもまた、重賞特有の要因によるものでした。その辺りは次回、詳しくお話したいと思います。