プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“事件は会議室で起きてるんじゃない!”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
※今回が2024年最後の更新です。次回の更新は1/8(水)になります。
▼今週の重賞ピックアップ
12月28日 中山11R ホープフルS 芝2000m
ホープフルSは中山芝2000mでの施行。初角まで距離があるので先行争いによる内外の不利はありません。有馬記念の結果をみる限り、外が伸び始めている感じでしょうか。
登録馬19頭中前走の通過順位に3番手以内のある馬が12頭。このメンバー構成だと先行争いが激しくなるので、内枠の馬、距離短縮の馬にアドバンテージがあるでしょう。
1番人気想定はクロワデュノール。キタサンブラックは超大物を出しますが、この馬もその候補といえるでしょう。デビュー2戦、先行抜け出しで危なげなく勝利を収めています。東京向きの切れ味という印象なので、中山コースがひとつの課題。そして先行タイプなのでなるべく内枠が欲しいところです。能力の高さは認めつつ、あとは1番人気・2.4倍が見合うかどうかの判断です。
2番人気想定はマスカレードボール。王道の2000mG1なので、芝1600mでデビューしている点は少し気になります。ただ、そこで10番手でためる競馬を試みられている点には好感がもてます。ここは1800mからの距離延長ローテでもあり、2番人気ではやや買いにくいか。
3番人気想定はマジックサンズ。札幌芝1800mで2連勝。前走で降したアルマヴェローチェは後の2歳女王で、3番人気・8.2倍は甘いオッズに映ります。ただ、ここ2戦、6-6-4-2、6-6-6-2と自力で動いていく競馬で、激流のG1向きの脚質ではないのは気掛かり。どちらかといえば、G1で負けてG2をしっかり勝ち切る、そんなタイプではあります。
4番人気想定のピコチャンブラックもキタサンブラック産駒。能力の高さは感じますが、強い相手に厳しい競馬を経験していない点が課題となりそう。
5番人気想定はアマキヒ。お母さんは三冠牝馬のアパパネですね。新馬戦は逃げ切りですが、タイムは優秀。キャリア一戦の馬は、人気なら疑いますが、人気薄なら狙えます。ルメール騎手騎乗で13.9倍もらえるなら。
メンバー全体を見渡しても、中距離でしっかりためる競馬を試みられている馬や、スタミナの裏付けのある捲りタイプが少なく、事前に狙いを絞るのが難しいレース。強いていえば、京都2歳Sを6-6-7-7から3着したクラウディアイでしょうか。ただ、8頭立ての3着なので、数字ほどの価値がある内容ではありませんが。
2-3-3から未勝利を勝ったジュンアサヒソラ、新馬戦を5-3-4-4で勝っているジェットマグナム辺りに注目しておきます。
これといった穴馬が不在で、並びと枠順が鍵を握りそう。内を引いた先行馬、内に潜りこめそうな差し馬が狙い目になりそうです。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言162
事件は会議室で起きてるんじゃない!
★ピックアップレース★
12月15日 京都11R 朝日杯FS 芝1600m 良
◎4ミュージアムマイル
○12パンジャタワー
▲3ランスオブカオス
△8アルテヴェローチェ
☆5コスモストーム
注2アドマイヤズーム
注7クラスペディア
穴13エイシンワンド
―今回は12月15日の朝日杯FSを取り上げます。注→◎→▲の決着で、3連複174.6倍、ワイド(◎▲)25.0倍の的中となりました。
みねた)甘かったですね。この配当は甘いと思います。
―◎4ミュージアムマイルは週中展望の段階で「好走確率はそれなりに高いでしょうが、1番人気・2.9倍のオッズが見合うかは微妙」という見解でした。
みねた)正直、この馬が抜けた1番人気になると想定していました。距離短縮はいいし、前走の内容も価値があるけれど、1番人気だと馬券的に期待値を取るのは難しいかなと考えていましたが、蓋を開けてみたら前売り段階で4.8倍。先行馬が揃っており内枠有利になる可能性が高い一戦で絶好の4番枠をひけたことも加味すると、十分に期待値が取れると判断しました。
―最終的には3.7倍まで下がりましたが、それでも期待値は取れましたか?
みねた)2番人気でしたからね。この馬より人気を集めている馬がいるという事実は大きいです。1番人気からの流しと2番人気からの流しではかなりオッズが変わるので、組み合わせの馬券ならば十分に期待値が取れていたはずです。
―なぜ、ミュージアムマイルは思ったよりも売れなかったのでしょうか?
みねた)ハッキリした理由はわかりませんが、人間心理が関係しているかもしれません。一番人気の不安要素、消し情報というのはニーズがあるじゃないですか。だから、想定1番人気のミュージアムマイルに対する消し情報は、割とSNS等も賑わせていたと思うんです。それを読んだ人にも消し情報が頭に刷り込まれ、「よーし、1番人気のミュージアムマイルを消すぞ!」となる。
―ところが、実際には2番人気。
みねた)「1番人気だから消すぞ!」と思っていたはずが、2番人気であったにも関わらず「消すぞ!」だけが残ってしまうと言いますか。
―行動経済学でいう「現状維持バイアス」を思い出しました。決めたことを変えて失敗したら後悔するという。
みねた)人間が馬券を買う以上、競馬は心理戦ですからね。そういう意味では、自分が狙いたい馬がいる場合、大手サイトや大手競馬専門紙の想定オッズで人気になっている方が、結果的に甘いオッズで買える可能性が高まるかもしれません。
―確かに、「大手サイトで予想オッズ10倍だったのに5倍しかつかなかった」みたいな恨み節(?)は、SNSでもよく見かけます。
みねた)要するに、「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」ということなんですよ。
―『踊る大捜査線 THE MOVIE』の名シーン! 我々、世代ですからね(笑)。で、その心は?
みねた)会議室というのは、大手サイトや大手競馬専門紙で多くの競馬ユーザーが参考にしている想定オッズのことです。実際に馬券を売り始めたら、実オッズが全て、現場が全てなんです。そこで、「想定は2.9倍だったけど…」と語ることに意味はありません。
―その瞬間その瞬間のオッズに対して、期待値が見合うか、つまり損か得かを考えるということですね。
みねた)そういうことです。もちろん、週中の段階で想定オッズをもとに見解を話すことは否定しません。私も10代で工場労働の経験があるのでわかるのですが、親しくないオジさんと休憩時間に話す話題なんてあまり無いんですよ(笑)。でも、週末の競馬の話をしていたら、話題に事欠かなかった。仮に10000円馬券を買って控除率通りの8000円が戻ってくるとしたら、2000円で毎週の話題を買えることになります。これって、素晴らしい趣味ですよね。
―週中に語る競馬と、オッズが出てから語る競馬は別物であり、それぞれの楽しみ方があるということでしょうね。さて、これで年内のコラムはラストとなります。簡単に2024年の競馬を振り返っていただけますか?
みねた)ジョッキーの通信機器問題など、特に後半はマイナスの話題も多かったのは残念ですね。敢えて言葉にするなら、関係者にとってもファンにとっても、少し競馬が“カジュアル”になり過ぎているような気がします。ギャンブルの性質上関係者はもう少し危機感があった方がいいし、ファンの側にもなぁなぁを許さないアツさが必要なのかなと。もちろん、競馬ファンがカジュアルになる=競馬が市民権を得るということなので、基本的に喜ばしいことだとは思っていますが。ギャンブラーとしては、2025年もやることは変わりありません。与えられたものの中で期待値を追求していくだけです。