プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“買いにくい理由があるからこそ期待値がある”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
5月4日 京都11R 天皇賞・春 芝3200m
天皇賞・春は京都芝3200mで施行。初角となる3コーナーまでは400m以上あり、先行争いにおける有利不利はありません。トップレベルの争いとなるG1レースだけに道中は内でロスなく進められるに越したことはなく、枠の並びは大きな鍵となるでしょう。
登録15頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは6頭。先行馬占有率40%と標準的で、道中は好位につけられるタイプが良さそうです。
1番人気想定はヘデントール。菊花賞が17-16-8-5という凄まじいロングスパートで2着。前走のダイヤモンドSも5-5-5-1から後続を0.7秒ちぎり捨てました。まさに“スタミナお化け”といった印象です。そして鞍上は鬼に金棒ならぬ、強い馬にレーン。不安要素は見当たりません。
2番人気想定はサンライズアース。前走の阪神大賞典が後続に1秒差をつける圧巻の内容でした。思い起こせば、ハイレベルだったと言われる昨年のダービーで17-17-2-2と捲り打ち4着。能力の高さ、豊富なスタミナの片鱗はみせていましたね。3走前の4.2秒差は度外視して良いでしょうが、2走前には3勝クラスで2着止まり。前走内容は評価しつつも、圧勝の反動も気になるところで、非常に評価が難しい一頭です。想定オッズ4.4倍では、やや見合わない印象も。
3番人気想定はジャスティンパレス。一昨年の天皇賞・春の勝ち馬で、その後も王道路線を歩み続けています。1、2番人気想定の2頭が捲りタイプなので、道中でしっかり脚をためるこの馬に展開は向くでしょう。近走は善戦止まりですが、常に「展開ひとつ」という印象で、そろそろ馬券内突入があってもいい頃。想定通りの7.6倍なら◎候補の一頭です。
4番人気想定のハヤテノフクノスケは2勝クラス、3勝クラスを圧倒的な強さで連勝中。いきなりのG1挑戦で上位人気なら、普通であれば「人気を吸ってくれそう」だとシメシメと思うところなので、この馬は道中で脚をためた上でぶっちぎるという非常に強い内容なので、一概に軽視はできません。G1連戦や海外帰りと比較して、ローテーションも楽。あとは想定10.6倍が見合うかどうか。
5番人気想定のショウナンラプンタ、6番人気想定のビザンチンドリームは、ともにハイレベルと謳われる4歳世代。菊花賞4、5着というこの両馬が、その後に活躍している事実が、4歳世代の強さを証明する形となっています。あとは人気との兼ね合いでしょう。
4歳世代が目立つ分、盲点になりそうなのが古馬勢。日経新春杯3着→日経賞1着と前哨戦で活躍していながら想定8番人気となっているマイネルエンペラーは期待値がありそう。日経賞で0.4秒差・12着だったシュヴァリエローズもここは買い頃のオッズが期待できる臨戦過程です。
ブローザホーンは昨年の2着馬。昨秋は惨敗続きでしたが、阪神大賞典で復調の兆しはみせました。ただ、その阪神大賞典は3着とはいえ、勝ち馬サンライズアースからは1.1秒離されており、想定7番人気の14.8倍で期待値があるかは微妙なところです。
上位人気が見込まれる4歳馬たちがしっかり実績を残しており、上位拮抗といった印象。ただ、ファンの間に「強い4歳勢」という意識が浸透すればするほど、古馬のオッズが甘くなる可能性もあります。並びも非常に重要で、悩み甲斐のあるレースですね。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言179
買いにくい理由があるからこそ期待値がある
★ピックアップレース★
4月12日中山11 ニュージーランドT 芝1600m良
◎13イミグラントソング
穴○9ジェットマグナム
▲7アドマイヤズーム
△4ルナルーチェット
☆2コートアリシアン
注12プリティディーヴァ
―先週に引き続いて◎→▲→☆の決着だったニュージーランドTについて伺います。前回のラストで「アドマイヤズームが売れ過ぎた理由と格上挑戦馬が期待値を取りやすい理由は根本部分で繋がっている」とのことでした。
みねた)お聞きしたいのですが、例えばあなたが単勝に1000万円ぶちこむ必要があるとします。そういう時、どういう馬を狙いますか?
―単勝1000万円! そうですねぇ、やっぱり安定感のある馬というか、隙のない馬を買いたいですよね。初芝、初ダートみたいな未知な要素がある馬は買いにくいし、「ハマれば頭!」みたいなのもちょっと…。
みねた)それが正しい発想だと思います。では格上挑戦馬はどうですか?
―それもちょっと嫌です。格上挑戦ということは、現級実績に乏しいということですもんね。
みねた)と思いますよね。それこそが、格上挑戦馬が期待値をとりやすい大きなファクターの一つなのです。
―「買いにくい」という心理ですか?
みねた)そうです。正確に言えばぶっこみにくい=大金を賭けにくいということですね。これは税収とかにも通じるのかもしれませんが、お金の奪い合いでは、多くの人から広く浅く取るよりもたくさん持っている人からガツンともらう方が楽なんですよ。言い換えると、幅広く1000円ずつ買われている人気馬よりも100万単位でガンガン買われている人気馬が居る方が期待値をとりやすい、ということです。
―なんだかカイジとかの世界観みたいですが(笑)、イメージはわかります。みねたさんは、以前に2着続きの馬は期待値を取りにくいとおっしゃっていましたが、安定していて安心感のあるタイプは大金を突っ込みやすいので、売れ過ぎてしまい期待値が下がってしまう。
みねた)アドマイヤズームは格上挑戦だったイミグラントソングなどとは真逆で、「単勝に大金を投じやすい馬」でした。前走G1勝ちという格上の存在で、1600mの実績も十分。馬齢重量戦なので斤量も他の牡馬と同じ57キロです。トップジョッキーの川田騎手が騎乗していて、他の上位人気馬に比べると相対的に内目となる7番枠。
―確かに安心感がありますね。“太客”が多いのも頷けます。
みねた)冷静に考えれば新馬戦で負けていますし、G1ホースとはいえ、まだ2勝しかしていない馬。未対戦馬も多くいる中で、1.7倍は明らかに過剰人気です。アドマイヤズームが期待値を吸っている以上、このレースは「アドマイヤズーム以外の馬の単勝」に期待値が上乗せされている状態でした。好走率との兼ね合いを考えると2~5番人気は特に甘かったと思います。
―なるほど。ただ、前回の原稿のラストで、「イミグラントソングの5.5倍は少し辛い気がする」ともおっしゃっていましたよね。
みねた)期待値をとりやすい格上挑戦馬で、有利とはいえない13番枠でもありますし、出馬表だけみたら10倍ぐらいあってもいいとは思いました。想定通りに10倍あれば、すごく勝負したいレースでしたよね。とはいえ、私が使っている他の指標的にも買いでしたし、アドマイヤズームが期待値を吸っていることはわかっていたので、総合的には「買い」で正解だったと思います。
―「大金を入れられそうか?」という視点は新鮮でした。
みねた)期待値を考える上では欠かせない視点です。仮に「イミグラントソングは強いよ!」と教えられたとしても、1勝クラスで取りこぼしていて、枠も有利とはいえない8枠。単勝に大金を突っ込むのは躊躇しますよね。だからこそそこに期待値が生まれてくるわけです。一方で、アドマイヤズームのような「大金を入れられそうなタイプ」は、好走率以上に買われてしまうケースが増えます。人間が馬券を買う以上、人間心理に思いを馳せるのは大事ですよね。
―実は私もイミグラントソングは枠順が気になって躊躇してしまいました。
みねた)そういう人がいるから期待値があるわけです。買いにくい理由があるからこそ期待値がある、ということですね。