7月に入り、中央競馬は福島・小倉・函館の夏開催がスタート。なかでも印象的だったのは、芝コースの日本レコードが次々と生まれた小倉競馬でした。
土曜3レースの3歳未勝利では、エスコーラが1:43.8という芝1800mの日本レコードを樹立。サラキアやサリオスの弟が見せたパフォーマンスは2着馬に大差をつけてのもので、これは勝ち馬が強すぎました。
しかし、2004年の北九州記念でダイタクバートラムが記録した小倉芝1800mのレコード1:44.1はおろか、2014年の都大路S(京都)でグランデッツァが記録した1:43.9の芝1800mの日本レコードを、未勝利馬が、しかも最後は流しながら更新したのは、やはり普通でないように思えました。
すると、同日10レースで行われた2勝クラスの戸畑特別(芝1200m)で、プリモダルクが1:06.4で勝利し、後の英国G1・ジュライCの勝ち馬アグネスワールドが1999年に北九州短距離Sでマークした1:06.5の日本レコードを更新。そして、このレコードは翌日曜のCBC勝で上位4頭が更新し、勝ち馬ファストフォースの1:06.0が芝1200mにおける最新のレコードタイムとなりました。
22年間破られなかった記録が2日間で立て続けに更新されたわけですから、この2日間の小倉競馬場の芝コースは間違いなく「高速馬場」でした。
平時ですと7月下旬から行われる小倉競馬が、京都競馬場の改修やオリンピックの影響で1か月近く早い開催となったことなどが関係しているかもしれません。ただ、JRA発表のクッション値は9.8ないし9.9と標準でしたし、芝丈も10~12cmと特に短くはありませんでした。「高速馬場」の理由については、関係者の皆さんの検証を待ちたいと思います。
ところで、この「高速馬場」という表現、実は私たちキャスターは、今、使用を禁じられています。
2019年、東京競馬場の春秋の開催で次々にレコードタイムが生まれた際、「高速馬場」の表現が連呼され、JRAから「脚に負担がかかる馬場との印象を与える」とのお達しが来たのです。
「高速馬場を高速馬場と言って何が悪いんだ!」と、はじめは私もイラッとしましたが、人の力と自然の力で出来上がる馬場づくりの難しさは想像に難くありませんし、競走馬の健康を考慮していないはずもなく、にもかかわらず疑念を持たれてしまうきっかけになるのであれば、別の表現を使おうと思い直しました。大人なので。
そこで、今私が使っているのが、“特殊な馬場”という表現です。そう、亀谷サロンで頻繁に使われている表現を拝借させていただきました。今回の小倉は“異常に速い時計が出る特殊な馬場”。もちろん「高速馬場」と同じことを言ってるのですが、今度は禁じられないことを祈っています・・・。
というわけで、今回から当コラムは毎週木曜日に公開となりました。皆様、これからも「ココだけのハナシ」で、よろしくお願いします!