全国各地に土砂災害などの甚大な被害をもたらした今年の梅雨。天気予報によると、今週末以降、既に梅雨が明けている沖縄、九州、中国地方以外の各地でも続々と梅雨が明けそうです。
するとやってくるのが猛暑。今度は熱中症対策など、暑さから健康を守ることが必要な季節がやってきました。そして、それは人だけではありません。競馬の主役である競走馬にとっても、近年、暑熱対策は大変重要になっています。
馬は人間同様、汗をかいて体温を下げることができる数少ない動物であることは知られていますが、汗をかくのは主に運動をした時で、人間と違い、高温に対して汗をかく能力は発達していません。
「馬は暑さに弱い」と一般的に言われているのはこのためで、一気に気温が上がり、急に暑さが訪れるであろう今週末のような時季は、競走馬にとって最も熱中症を発症しやすいんだそうです。
JRAが行っている暑熱対策でまず思い浮かぶのが、パドックでのミスト。2017年に夏の小倉競馬で初めて導入され、今では全国の競馬場パドック、装鞍所、馬場内の待避所に設置されています。
音を立てながら直に噴霧されるため、驚いてしまう馬も少なくないようで、それ程の暑さではなかった先週までの小倉や福島などは、必要に応じて運用してもよかったように思えました。逆に5月の東京競馬など、気温が一気に上がる開催日に、夏季競馬でなくてもミストで暑熱対策を行ったことは意味があったように思いました。
また、夏季競馬の期間は、装鞍所の集合時間を通常より5分遅くし(55分前→50分前)、パドックに入る時間も繰り下げて、パドック周回時間を短縮するという暑熱対策が行われています。
パドックの周回が始まるのは、通常そのレースの発走時刻の30分前ですが、今の時期は2~3分程度繰り下げて周回が始まります。この時期の中継で、レース終了後すぐに次のレースのパドックに行けず、CMなどで間をつないでいるのはそのためです。
ところで、この夏の福島競馬において、9レースの発走時刻が14:35から14:36に、10レースの発走時刻が15:10から15:11に、毎日、1分繰り下げられているのを皆さんお気づきでしたでしょうか?
これ、TV中継が関係している、いわゆる「ヤミ1」ではありません(競馬中継・ココだけのハナシ#1「“1”にまつわるハナシ」参照)。実は先ほどご紹介した、装鞍所集合時間の変更やパドック周回時間の短縮といった暑熱対策が関係しているんです。
さて、最後にクイズです。今回ご紹介した「パドック周回時間を短縮する」という暑熱対策は、北海道を除く競馬場で実施されています。ところが、函館競馬でも、前のレースが終わった後、次のレースのパドック周回が始まらず、中継キャスターは微妙な間をつながなくてはいけません。
函館競馬のパドック周回がすぐに始まらないのは一体なぜでしょうか? 正解は来週のコラムで!