先週取り上げた「新潟千直ミルファームまつり」。今年は過去2番目に多い10頭出しでした。パドックには、勝負服デザインの全身タイツを纏った「ミルファームマン」が出現するなど(笑)、すっかり浸透した感があります。
結果は1着エシェロン、2着チアリングで、ミルファーム所有馬のワン・ツーフィニッシュ! 史上最多の12頭出しだった去年は、ビッグレッドファームのワン・ツーでしたから、今年はリベンジを果たした結果になりました。ちなみに「まつり」でのミルファームのワン・ツーは、8頭出しだった2016年以来5年ぶり。
そう言えば、勝ち馬エシェロンの斎藤誠調教師が「ミルリンピック」と表現していましたが、2016年と言えば前回リオデジャネイロ大会があった年。“夏季オリンピックが行われている年の「ミルリンピック」はミルファームが金&銀を獲る”のかも知れません(笑)。
さて、そのオリンピック。注目度が高くテレビ視聴者も多いため、選手同様に注目されるのが「実況アナウンサー」です。2004年のアテネオリンピック体操男子団体決勝でエース冨田洋之選手の鉄棒で飛び出したNHK刈谷富士雄アナウンサーの『伸身の新月面が描く放物線は栄光への架け橋だ!』はあまりにも有名ですが、名シーンには名実況が生まれます。
今年も、スケートボード女子ストリートで西矢椛選手がフィニッシュし史上最年少の金メダリストが誕生したシーンでの『13歳、真夏の大冒険!』や、阿部一二三&詩兄妹が史上初めて兄妹同日金メダル獲得を達成した柔道男子66キロ級決勝での『やっぱりお兄ちゃんも強かった!』など、名実況が生まれています。
競馬ファンの中には、後者の実況を聞いて、1994年天皇賞・春でビワハヤヒデの優勝を弟・ナリタブライアンの皐月賞レコード勝ちを受けて杉本清さんが『兄貴も強い、兄貴も強い、弟ブライアンについで兄貴も強い!』と伝えた名実況を思い出した方も多いはずです。
ただ、ココだけのハナシ、こうした名実況は同業者からすると「狙ったな」とすぐ分かります。狙わないと生まれません。「狙ってはいないが、偶然生まれた」という人もいますが、「こうなったら、こう言おう」というイメージはあったはずです。狙うことは悪いことではなく、狙った表現が狙い通りに心に刺さればいいのだと思います。
そういう意味では「真夏の大冒険」などは、よくよく考えると意味不明で(笑)、ギリギリを狙って成功した例だと思います。後輩は、あまり真似しない方がいいかもしれません。前段で触れた杉本清さんは『実況の基本は忠実な描写です』と、いつもおっしゃっていました。
杉本さんに憧れて競馬実況を志していた私達に、表面だけの真似をしないように諭していたのだと思います。「実況」は奥が深いです。