18日、東京競馬場では、G3ユニコーンステークスが行われます。
中央競馬では初めてとなる3歳(創設当時の表記は4歳)限定のダート重賞として1996年に創設され、伝説上の動物ユニコーン(一角獣)の名前がつけられたレースは今年で28回目を迎えます。これまでにも開催時期の変更などはありましたが、来年(2024年)からは全日本的なダート競走の体系整備に伴い位置づけが変更されます。
ユニコーンSが創設されたのは、中央・地方の「交流元年」と言われた1995年の翌年で、1996年から1998年まで3年間だけ存在した「4歳(現3歳)ダート三冠競走」の1冠目として行われました。2冠目の大井の統一G2・スーパーダートダービー(現在は廃止)、3冠目の盛岡の統一G1・ダービーグランプリ(現在は地方競馬全国交流)とで形成していた「ダート三冠」については、去年6月に投稿した「ダート三冠とウイングアロー(1)」でも取り上げていますので、よかったらご覧ください。
▼参考記事
ダート三冠とウイングアロー(1)/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
創設当時は秋に行われていたユニコーンS。第1回のレースは中山のダート1800m戦で行われました。初代の優勝馬シンコウウインディは、翌年、やはりG1昇格初年のフェブラリーステークスを制し、2つのレースの歴史の1ページ目にその名を刻みました。
東京のダート1600mで行われた第2回のレースには、藤沢和雄調教師が管理する栗毛の外国産馬が出走しました。4戦3勝、3か月ぶりのレースだったタイキシャトルは3番人気でしたが、2着のワシントンカラーに2馬身半差をつける快勝。日仏でG1競走5勝を挙げ、顕彰馬にもなった歴史的マイラーの重賞初勝利はユニコーンSでした。
第3回からは再び中山のダート1800mに戻り、この年は“幻のダート三冠馬”ウイングアロー(「ダート三冠とウイングアロー(2)」参照)が優勝。
▼参考記事
ダート三冠とウイングアロー(2)/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ
第4回は後にマイルCS南部杯を制する牝馬ゴールドティアラ、第5回は国内外で芝・ダートのG1を6勝したアグネスデジタルと、創設初期の優勝馬は豪華な顔ぶれでした。
1999年の統一G1・ジャパンダートダービー創設でスーパーダートダービーが2001年に廃止となり、「ダート三冠」は消滅しました。ユニコーンSは7月のジャパンダートダービーに向けた中央勢の前哨戦的位置づけとなり、開催時期を秋から6月に移動。これにより、舞台は東京競馬場ダート1600mに固定され、翌年、負担重量も定量戦から別定戦に変更となりました。
2003年の優勝馬ユートピアは、のちにダービーGP、マイルCS南部杯(連覇)と盛岡の統一G1を勝ち、ドバイでゴドルフィンマイルを制して、そのままゴドルフィンに移籍しました。2005年は同じ金子真人オーナーの所有馬だったカネヒキリが優勝。屈腱炎と闘いながらダートG1級7勝を挙げ、馬主、生産牧場、主戦騎手が同じだった同期の名馬になぞらえ「砂のディープインパクト」と呼ばれました。
その後も、ベストウォーリア(2013年)、ノンコノユメ(2015年)、ゴールドドリーム(2016年)、サンライズノヴァ(2017年)、ルヴァンスレーヴ(2018年)、カフェファラオ(2020年)といった優勝馬が名を連ね、ユニコーンSはJRAにおけるダートホースの出世レースでありつづけています。
そして、全日本的なダート競走の体系整備として大井の羽田盃や東京ダービーがJpnIに格付けされる来年からは、「ダート三冠」の2冠目「JpnI・東京ダービー」への優先出走権が与えられる前哨戦として行われ、開催時期も5月に繰り上がる見込みです。
さて、今年の3歳ダート戦線は異例のハイレベルとなっています。中央にはUAEダービー優勝馬デルマソトガケや、兵庫チャンピオンシップを楽勝したミトノオーなどがいるほか、南関東には無敗の二冠馬ミックファイアやマンダリンヒーローらもいて、7月12日のジャパンダートダービーが大注目の一戦となること間違いなしです。それだけに、節目を迎えた今年のユニコーンSからも目が離せません!
2023/06/15 (木)
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。