2021年の桜花賞馬であり、2020年の阪神ジュベナイルフィリーズ、2022年のヴィクトリアマイルと、あわせてGI競走を3勝したソダシが現役を引退しました。
純白の白毛馬ソダシが勝利した2020年の札幌2歳Sは白毛馬初の芝重賞勝利、同年の阪神JFは世界初の白毛馬によるGI勝ち、無敗で制した2021年の桜花賞は白毛馬初のクラシック優勝でした。次々に歴史を塗り替えてきた「純白のアイドル」は、ぬいぐるみが売り出されても即完売の大人気。記録にも記憶にも残る牝馬でした。
▲今年のヴィクトリアマイルでのソダシ
白毛一族の祖シラユキヒメが走っていた頃までは「白毛馬は走らない」などと言われていましたが、その血を引く白毛馬たちが次々に活躍して、それがただの迷信だったと証明されました。ソダシの活躍で、むしろ「白毛馬には大物が出る」という定説まで生まれるかもしれません。
出現率0.014%の「白毛」は言わずもがな最も珍しいサラブレッドの毛色です。中でも突然変異により白毛馬が誕生する確率は、約20,000分の1といわれていて、青鹿毛の父サンデーサイレンスと鹿毛の母ウェイブウインドの間に生まれた白毛馬シラユキヒメも、そんな低確率の突然変異で誕生しました。
突然変異でも白毛の遺伝子は遺伝するため、シラユキヒメは多くの白毛の遺伝子を伝えました。両親のどちらかが白毛の場合、遺伝により白毛で生まれる確率は50%ですが、シラユキヒメの産駒12頭のうち実に10頭が白毛で、そのうち6頭が牝馬だったため、シラユキヒメ一族の白毛牝系は加速度的に枝葉を広げた印象です。
もちろん、その背景に、誕生した競走馬たちの活躍があったのは言うまでもありません。
白毛で生まれた3番仔の牝馬ユキチャンは南関東の牝馬限定ダートグレード競走を3勝。鹿毛馬として生まれた孫の現役馬メイケイエールはこれまでにJRAの芝重賞を6勝しています。
6番仔のマシュマロも白毛の牝馬でした。その息子ハヤヤッコは白毛で生まれ、2019年のレパードSで白毛馬初のJRA重賞勝ち。2022年の函館記念も制するなど、重馬場巧者として知られる現役馬です。
同じく白毛の牝馬として生まれた7番仔ブラマンジェと8番仔マーブルケーキからは、それぞれダノンハーロックとルージュエクレールというOPクラスの現役馬が出ていて、今後、重賞ウイナーが誕生するかもしれません。
そして、9番仔のブチコ。1歳上の全姉マーブルケーキ同様、まだら模様(ブチコのほうがはっきりしたブチ柄)の牝馬でした。ブチコ自身も中央で4勝する活躍をしましたが、その仔ソダシがGIを3勝。鹿毛で生まれたママコチャも先日のスプリンターズSを制して、GI馬2頭の母となりました。いち早く繁殖入りすることになったソダシも、現役の全妹ママコチャも牝馬なだけに、この牝系の枝葉はさらに広がりそうです。
そのほか、今年9歳で引退し誘導馬デビューを目指して訓練中のシロニイや、現役の7歳牝馬ブッチーニなど、その毛色だけでなく、競走馬として個性的な馬が多いシラユキヒメ一族。一族の競走馬(引退馬含む)のうち白毛馬の数を数えると、なんと25頭もいました。
日本初の白毛のサラブレッドは1979年に突然変異で生まれたハクタイユーですが(2022年8月公開「ハクホウクンとホワイトエンジェル賞」参照)、以降、現在までに日本で誕生した白毛馬の数は、突然変異の6頭、遺伝による44頭の計50頭。20,000分の1の確率で白毛馬として誕生したシラユキヒメの一族は、いまや日本における全ての白毛馬の2分の1を占めているのです。
2023/10/12 (木)
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。