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競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ
2024/06/20 (木)

イナリワンと穴守稲荷/競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ

競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。今回のテーマは「イナリワンと穴守稲荷」です。


日曜日は宝塚記念が行われますが、今回は35年前(1989年=平成元年)、第30回宝塚記念の優勝馬で、この年の年度代表馬にも選ばれたイナリワンについてのハナシです。

イナリワンは、父が日本にミルリーフ系を広めた種牡馬ミルジョージ、母テイトヤシマの父は1962年の英国ダービー馬ラークスパーという血統で、1984年5月7日、門別町の山本実儀牧場で生まれました。

ミルジョージ産駒は、初年度産駒のロッキータイガーが1985年に帝王賞を優勝し、ジャパンカップでシンボリルドルフの2着に入るなど活躍したほか、1世代下のミルコウジも東京ダービーを制するなど、当時、地方競馬を中心に一大勢力を築きつつありました。

そんな父ミルジョージによく似た鹿毛の牡馬に一目惚れして購入した保手浜オーナーは、自身が通っていた東京・羽田の穴守稲荷神社の当時の禰宜に請願し、穴守稲荷の「イナリ」に「一番出世してほしい」という期待を込めた「ワン」をつけ「イナリワン」と命名しました。

地方・大井の福永二三雄調教師の下で1986年12月にデビューしたイナリワンはオーナーの期待通りに連戦連勝。翌春の羽田盃や東京ダービーへの出走は叶わなかったものの、秋には南関東三冠の最終戦・東京王冠賞を制して重賞初制覇。次いで船橋に新設された重賞・東京湾カップの初代優勝馬にもなり、デビューから破竹の8連勝を飾りました。

1988年は苦手な重馬場でのレースが続いたこともあり5連敗を喫しましたが、「勝てば中央に移籍し、春の天皇賞をめざす」と宣言して臨んだ暮れの大一番・東京大賞典を見事優勝。東京大賞典は1962年から距離3000mで行われ翌年2800m戦に変更されており、イナリワンは「3000mの東京大賞典」最後の優勝馬となりました。

地方14戦9勝の戦績を残して、1989年に美浦の鈴木清厩舎に移籍したイナリワンは、引退する1990年までに中央で11戦して3勝。その3勝はいずれも1989年に制した天皇賞・春、宝塚記念、有馬記念というビッグレースでした。

元号が平成に変わった1989年、中央競馬にはイナリワンより1歳下のオグリキャップとスーパークリークという有力馬がいましたが、春シーズンは2強とも故障や脚部不安で不在でした。そうした中、スーパークリークの主戦・武豊騎手を鞍上に迎えたイナリワンは、天皇賞・春を2着馬に5馬身差つけてのレコード勝ち。

つづく宝塚記念も、ヤエノムテキ、サクラチヨノオー、コスモドリーム、バンブーメモリー、フレッシュボイスらGI馬7頭が揃う中で勝利し、休養中だった2強にイナリワンが加わって“平成三強”と呼ばれました。

ところが、オグリキャップとスーパークリークが復帰した秋は、毎日王冠、天皇賞・秋、ジャパンカップと連敗してしまいます。迎えた暮れの大一番・有馬記念では“平成三強”からイナリワンが脱落して、オグリキャップとスーパークリークの対決色が強まっていました。

しかし、イナリワンの鞍上・柴田政人騎手は「意地を見せてやろうと思った」と2強の競り合いのスキを突く強襲でスーパークリークをハナ差抑えて勝利。史上4頭目のグランプリ春秋連覇を飾り、南関東出身馬として唯一のJRA年度代表馬にも選ばれました。

年明けは連敗がつづき、脚部不安も生じたために、4着だった1990年の宝塚記念がラストランとなったイナリワン。種牡馬としては、東京王冠賞を父仔制覇したツキフクオーや大井記念、東京記念、金盃などを勝ったイナリコンコルドなど大井競馬の活躍馬を輩出しました。

さて、イナリワンの馬名の由来となった穴守稲荷神社は、かつて現在の羽田空港の敷地内にありましたが、戦後、連合国軍によって48時間以内の強制退去が命じられ、多くの施設が取り壊されるなどした悲しい歴史があります。地域の人々の努力で京浜急行空港線・穴守稲荷駅近くにある現在地に移転し復興した穴守稲荷神社は、今も京浜地域の稲荷信仰の拠点として多くの人々に親しまれています。

そんな穴守稲荷の社務所には、オーナーから奉納された優勝レイなどのイナリワンの貴重な記念品が展示されています。拝殿をはじめ、朱色が鮮やかな「千本鳥居」、高くそびえる「稲荷山」、商売繫盛などのご利益があると言われる奥之宮の「穴守の砂」など見どころが多い穴守稲荷を参拝したのち、社務所に一声かけて見学させてもらってください。

穴守稲荷神社。左が拝殿、右が千本鳥居。
▲穴守稲荷神社。左が拝殿、右が千本鳥居。


穴守稲荷神社の社務所に展示されているイナリワンの記念品
▲穴守稲荷神社の社務所に展示されているイナリワンの記念品


また、穴守稲荷神社では、イナリワンの誕生日である5月7日に「我が国の競馬界の発展と競走馬の健康、活躍を願う」必勝稲荷祭を実施。当日限定でイナリワンの蹄鉄拓を使用した特別御朱印が頒布され、私もいただいてきました。ちなみに5月7日は、今年の宝塚記念のファン投票1位ドウデュースの誕生日でもあります。

イナリワンの蹄鉄拓を使用した特別御朱印
▲イナリワンの蹄鉄拓を使用した特別御朱印


かつての地は東京初の地方競馬場で「羽田盃」のレース名の由来となった羽田競馬場も近かったなど古くから競馬との縁が深い穴守稲荷神社(4/18公開「羽田競馬場のハナシ」参照)。「穴守」だけに、ひょっとすると「穴」馬券的中のご利益もあるかも!?

ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

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大澤幹朗

1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。

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