競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは、9/1(火)に盛岡競馬場で行われたJpnII・不来方賞の観戦記です。
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1日、盛岡競馬場で行われたJpnII・不来方賞(ダ2000m)は、1番人気に支持されたイッテラッシャイがスタートから終始レースをリードし、最後は2着馬に6馬身差をつける圧勝劇を見せました。
▲不来方賞を圧勝したイッテラッシャイ
言うまでもなく、イッテラッシャイのオーナーは亀谷競馬サロンとも縁が深い堀江貴文さん(名義はSNSグループ)です。盛岡競馬場にはこの馬に深く関わっている小田吉男さんや、盛岡競馬場は初めてという亀谷敬正さんも来場され、私も同行させていただきました。
今年でダートグレード競走となって3年目の「不来方賞」。最初は「こずかた」と読めずに「ふらいほう」なんて読んでしまった人もいることでしょう。岩手に縁がない人にとっては、まだ馴染みがないレースかも知れません。
ですが、かつて20代を盛岡で過ごし、IBC岩手放送の局アナとして岩手競馬の実況をしていた私にとって「不来方賞」は思い入れのあるレースなんです。
皆さんは、レース名の「不来方(こずかた)」の意味と由来をご存知ですか。「不来方」は盛岡の昔の地名です。その由来は、かつて、この地で悪事を働いていた鬼を、地元の神様の力で追い出し、2度と来なくなった場所という意味で「(鬼の)不来方(こずかた)」と呼ばれるようになりました。
ちなみに、鬼を追い出したという地元の神様とは、盛岡市内に今もある三ツ石神社の三ツ石様という巨大な自然石です。鬼の悪事に困っていた人々が祈願したところ、鬼はこの巨石に縛り付けられ、恐れをなした鬼は、岩に手形を押して、この地に2度と来ないと約束しました。「岩手」という地名は、この鬼の手形の伝説からが生まれたのだと言われています。
また、毎年8月初旬に行われる東北を代表する夏祭り「盛岡さんさ踊り」も、この時、人々が「さんさ、さんさ」と鬼を追い出し、喜びを表現したのが由来とされています。
そんな盛岡や岩手の地のルーツを感じられるレース名の「不来方賞」は、1969年に創設され、今年で58回目を迎えた岩手競馬で最も歴史が古い重賞レースの1つです。
かつて不来方賞は「岩手競馬のダービー」で、私の入社1年目の岩手のダービー・不来方賞の優勝馬はメイセイオペラでした。時は流れ、不来方賞は全日本的なダート競走の体系整備に伴って2024年にダービーグランプリと統合。新設のJpnI・ジャパンダートクラシックのトライアルレースとしてJpnIIに格付けされました。
歴史ある「不来方賞」は、中央の強豪馬も集うダートグレード競走として新たな歴史を重ね始めたのです。
さて、ここからはイッテラッシャイの関係者と同行させていただいた私が見た“ココだけのハナシ”です。
愛馬の重賞初挑戦とはそれほど重たいものなのでしょう。あの堀江さんが、レース前やレース中は見たこともないほど緊張されていました。1番人気に支持されたこともプレッシャーになったのかもしれません。スタートを決め、終始、先頭を走っていた道中も、オーナーは声を出すことなく、ただ愛馬の走りを固唾を呑んで見つめていました。
直線で後続を突き放し、亀谷さんたちが「よしっ勝った」と勝利を確信しても、オーナーだけは最後まで表情を崩さず、雄叫びをあげたのはゴールの寸前でした。歓喜が大爆発する瞬間を共有できたことは私にとっても素晴らしく有り難い経験になりました。
堀江さんとした“グータッチ”は盛岡での大切な思い出になりました。口取りや表彰式では笑顔が弾けていた堀江さん。地元岩手のメディアの皆さんも「こんなに子供のようにはしゃいでいる堀江さんを見られるなんて」と嬉しそうに話していました。
今年、イッテラッシャイが不来方賞でマークした2.00.9という優勝タイムは、2014年のJBCクラシックでコパノリッキーがマークした盛岡競馬場ダート2000mのコースレコード2.00.8に0.1秒差迫るものでした。国内最多のGI、JpnI合わせて11勝を挙げた歴史的名馬に並ぶパフォーマンスだったということになります。オーナーは、どちらも亀谷競馬サロンに来場されている特別な力を“持ってる”方・・・という共通点もありますね。
この後は、ジャパンダートクラシック(10/7、大井競馬場ダ2000m)へ向かうイッテラッシャイ。まずはダート界の世代の頂点を目指します。そして、その先には――。
大きな夢に向かって、イッテラッシャイ!
▲不来方賞の口取り式
