プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“上空からの俯瞰で隊列をイメージする”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
6月2日 東京11R 安田記念 芝1600m
安田記念は東京芝1600mで施行。初角となる3コーナーまで500m以上と距離がたっぷりあるため、先行争いにおける内外の有利不利はそれほどありません。
出走予定の18頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは5頭。先行馬占有率的には好位を取れるタイプに向きそうです。
注目はなんといっても香港最強の中距離馬ロマンチックウォリアーの参戦でしょう。以前、このコラムで「外国馬の10倍以下は基本的に消し。10倍以上なら考える」という基本姿勢を書きましたが、それは「未知の魅力で人気になっている場合はおいしくない」という側面が大きく、そういう馬とロマンチックウォリアーでは実績が違います。外国馬、しかもベストとはいえない1600mなら普通は軽視なのですが、能力が違い過ぎるという可能性も否定できません。非常に扱いの難しい存在ですね。
1番人気想定はソウルラッシュ。前走の強さに、鞍上はモレイラ騎手。人気になるのも頷けますが、1番人気3.2倍が見合うかというとどうか。実際にマイルCSでこの馬に先着しているナミュールが4番人気5.2倍なら、馬券的にはこちらに目が向きます。
3番人気のセリフォスも、すっかりマイル路線の安定勢力として、常に人気を背負う存在になりました。この馬もその実力は確かですが、3番人気4.9倍で積極的に買いたいかと言われれば微妙なところ。
展開的には、ハナを切りそうなウインカーネリアンの10番人気23.3倍は面白そう。もともとマイルに実績のある馬で、距離延長ローテも不利とはならないメンバー構成でもあります。
フィアスプライドはG1を4番人気で好走後の推定6番人気は侮られている印象。ルメール騎手からの乗り替わりですが、坂井騎手も腕達者です。
一方、そのルメール騎手が選んだ格好なのがパラレルヴィジョン。格的には一枚落ちますし、先行抜け出しで恵まれての勝利という印象もあるので食指は動かないのですが、「ルメール騎手が選んだ馬」という一点だけで怖さはあります。
もともと芝のスピード勝負で好走歴のあるガイアフォースの7番人気16倍や、前走大阪杯4着で、元々クラシック路線で好勝負を繰り返していたステラヴェローチェの9番人気21.8倍も期待値がありそう。ステラヴェローチェはさすがに位置取りが後ろになり過ぎるかな、という懸念はありますが…。
最後にもう一頭の外国馬ヴォイッジバブル。この人気(8番人気19.4倍)なら狙う価値があるでしょう。ロマンチックウォリアーが「評判が評判を呼ぶ」状態になって売れる一方で、この馬が盲点になる可能性も。しっかり世論の空気とオッズを見極めたいところです。
ソングライン、シュネルマイスターが去ったことで群雄割拠のマイル路線。それだけに、新勢力の台頭も十分に期待できるでしょう。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言132
上空からの俯瞰で隊列をイメージする
★ピックアップレース★
5月19日 新潟9R 石打特別 芝1800m
◎14ヨウシタンレイ
○7タケトンボ
▲3メイショウノブカ
△2ブラックヴァール
☆5ガールズレジェンド
注4トンジンチ
[参考買い目]
単勝 14 2000円
ワイド 14-7.3.2 各1000円
馬連 14-7.3.2.5.4 各500円
3連複 14-7.3.2-7.3.2.5.4 各300円
―今回は5月19日新潟9Rの石打特別を題材に取り上げます。参考買い目は、ワイド10.3倍×1000円&12.5倍×1000円、3連複117.9倍×300円が的中で58170円の払い戻しとなりました。
みねた)これは並び含めて大好きなパターンでした。直線で突き抜ける勢いで伸びてきた◎14ヨウシタンレイが、ゴール前でフラフラして3着止まりだったのは誤算でしたが、会心の的中だと思います。
―全馬が馬場の内側をあけて外を回る競馬になって、最後は同じ脚色になってしまいましたね。では早速、「大好きなパターン」について解説していただけますか。
みねた)非常に狙いやすい“並び”だったので、是非、馬柱をご覧いただくか、手元に競馬新聞があれば、それを見ながら先行馬のカウントしてみてください。このレースで前走の通過順位に3番手以内があったのは、2ブラックヴァール、3メイショウノブカ、4トンジンチ、5ガールズレジェンド、7タケトンボの5頭です。先行馬占有率36%ですから、高過ぎず、低過ぎず、数字的には好位組に安定感がありそうですよね。
―ということで、前走4-4から2着している14ヨウシタンレイに◎ですか?
みねた)確かに単純に先行馬占有率と位置取りだけでも14ヨウシタンレイに目がいきますが、さすがにそれだけの理由で「厳選勝負レース」にはできません。“馬柱をみながら”と言ったのは、出走メンバー全体の並びを意識して欲しかったからです。
―“並び”という点では、先行馬5頭のうち4頭が並んで配置されているのが気になります。
みねた)それは当然、みるべきポイントですね。金言18「同型脚質並びの隣の別脚質馬」の解説を引用します。
先行脚質の馬が並んでいると、どうしても序盤のポジション争いの時にエネルギーを使うことが多くなります。差し脚質の馬が並んでいる場合も、スムーズに外に出すための進路の奪い合いが生じます。このように、同型脚質が並んで配置されると、バラバラに配置された場合に比べて消耗しやすいという構造があるわけです。
この視点で先行馬以外もみていくとどうでしょう? 8番より外には前走3番手以内経験馬が一頭もいないわけですが、さらに仔細にチェックしていくと、10番オウケンムーンアイ、11番ノーブルマルシェ、12番ナンヨーアゼリア、13番メランポジュームの4頭が前走二桁の通過順位を記録していることがわかります。要するに、極端な追い込み馬ですね。
―外目の4頭もまた追い込み馬同士という意味で「同型脚質並び」だったわけですね。
みねた)そしてその“横”が14ヨウシタンレイでした。このレースを「厳選勝負レース」にしたのは、この並びだったことに尽きます。先の金言18「同型脚質並びの隣の別脚質馬」から再度引用します。
大半の馬にとって、近くに別の馬がいることはストレスで、周りに馬がいない状況の方がのびのび走れます。そして、同型脚質が固まった隣の別脚質の馬は、その状況を得られやすい。これは枠の並びをみる上で、覚えておいた方がいい鉄則です。
このように、同脚質の外という時点で、周りに馬がいない、ノーストレスの状態で走りやすいというアドバンテージがあります。ましてや14ヨウシタンレイは大外枠なので、さらに外側から被される心配もありません。この並びを上空から俯瞰でイメージしてみてください。
―イーグルアイというやつですね。内側から先行馬が出ていき、その外側の馬たちが遅れて、大外の14ヨウシタンレイも前に出ていく形です。ボートでいうところの“中へこみ”のような状態で、(ボートだと)捲りが決まりやすい隊列。
みねた)競馬も同じですよ。大外から先行しようと思ったら、すぐ内の馬が切りこんでくれて、その馬についていく形をとるか、内の馬より前に出るかのいずれかです。ただ、内の馬と一緒に切れ込む場合、どうしても内の馬たちの様子を窺いながらになって、自分主導では走れません。その点、自身のすぐ内の4頭が後方からいくのであれば、スタートが無理に押すことなく内に切れ込んでいくことができます。周りに馬がいないのでストレスもかかりません。
―金言34「初ダートの大外枠、少頭数の大外枠」でも、大外枠のメリットを語っていただきましたが、まさにそれを体現するような結果だったわけですね。
みねた)何より、「外から被せられる心配がない」というのは大きいですね。今回のように、大外が先行馬で、その内側数頭が追い込み馬という並びは、大外の先行馬にとってかなり楽ですよ。このレースは初角まで長い新潟芝1800mだったこともあって、外枠自体の不利はほとんどありませんし、14ヨウシタンレイは非常に期待値の高い存在でした。大外枠というのは、どちらかというと過小評価される傾向にあるので、“大外枠だけを狙う馬券師”なんていうのも面白そうですね。
―確かに。ただ、その馬券術だと、勝負するレースを明かしただけでどの馬を狙っているかバレてしまうので、商業的には難しそうです(笑)。
(次回に続く)