プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“スタート直後の不利とゴール前直線での不利”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
6月9日 東京11R エプソムC 芝1800m
エプソムカップは東京芝1800mで施行。初角となる2コーナーまで150m強しかなく、先行争いにおいては内枠が有利なコースです。
登録19頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのはグランスラムアスク、シルトホルン、セルバーグの3頭。先行馬占有率は低く、後方一辺倒のタイプは苦しそうです。
前出の3頭の比較ではグランスラムアスクとシルトホルンは格的に一枚落ちる印象で、注目すべきはセルバーグでしょう。2走前に小倉大賞典0.3秒差・3着、過去には中京記念を制した実績もあります。昨秋のマイルCSでも先行できているぐらいですから、ここなら先行策が濃厚。内枠をひいて、この人気(想定13番人気・47.9倍)なら面白い存在です。
また、格的には劣ると書きましたが、グランスラムアスクの前走3-5-7-6から0.6秒差という内容は悪くありません。斤量3キロ増とはいえ、想定では最低人気になっており、こちらも内枠を得られれば、大穴で狙ってみる価値はありそうです。
1番人気想定のレーベンスティールは、G2セントライト記念勝ちがあり実績上位ですが、前走のG3新潟大賞典は11着。その馬を単勝オッズ3倍で買いたいかと問われると…どうでしょうか。
2番人気想定のジェイパームスは目下3連勝中。7-8-6から差し切った前走、4-3-5から0.5秒差つけた1勝クラスの内容はいずれも優秀で、人気になるのも頷けます。とはいえ、昇級戦かつ今回はモレイラ騎手からの乗り替わり。こちらも2番人気で期待値が取れるかは微妙です。
3番人気想定は1年2カ月ぶりのヴェルトライゼンデ。過去にも長期休養明け初戦の鳴尾記念を制した実績があります。この相手なら能力上位で鉄砲駆けの実績があるのも確かですが、長期休養明けでの上位人気というのが買いにくいのも事実。
脚質的には不向きですが、期待値だけならルージュリナージュ。G1ヴィクトリアマイルを0.4秒差・5着からの臨戦で7番人気13.6倍なら、かなり甘いオッズという印象です。
ペースが落ち着きそうなので、道中で動いていけるタイプにも注目。タイムトゥヘヴンは前走のダービー卿CTを16-13-12から6着、ニシノスーベニアは同じくダービー卿CTを10-9-7から4着。今年のメンバー構成なら距離延長も歓迎です。
今年はそれほどメンバーレベルが高くないので、枠順や並びで大きく結果が動きそう。波乱の余地も十分にあるので、しっかり吟味して最終結論を出したいと思います。
▼みねたの金言133
スタート直後の不利とゴール前直線での不利
★ピックアップレース★
5月19日 新潟9R 石打特別 芝1800m
◎14ヨウシタンレイ
○7タケトンボ
▲3メイショウノブカ
△2ブラックヴァール
☆5ガールズレジェンド
注4トンジンチ
[参考買い目]
単勝 14 2000円
ワイド 14-7.3.2 各1000円
馬連 14-7.3.2.5.4 各500円
3連複 14-7.3.2-7.3.2.5.4 各300円
―先週に引き続き、参考買い目でワイド10.3倍×1000円&12.5倍×1000円、3連複117.9倍×300円の的中だった5月19日新潟9Rの石打特別を題材に取り上げます。前回は14ヨウシタンレイを◎にした理由について伺いました。「同型脚質並びの隣の別脚質馬」と「大外枠」の合わせ技でしたね。
みねた)簡単に復習しておくと、このレースは先行馬(前走通過順に3番手以内がある馬)が2、3、4、5、7と内枠に固まって入っていて、10、11、12、13には追い込み馬(前走の通過順位に二桁がある馬)が固まって入っていました。14番枠のヨウシタンレイにとっては、自分の内側にいる馬がスタート直後から下げることになるので、スムーズに内に切り込みながら先行できるという恵まれた並びでした。そして忘れてならないのが「大外枠」でもあった点です。自身の外側に馬がいないため、外側から被される心配がゼロ。つまり、スタート直後から、14ヨウシタンレイの周りに馬がいないのは確定的で、スムーズな競馬がほぼ約束されていたわけです。
―いくら金言18「同型脚質並びの隣の別脚質馬」に該当していても、自身の外に先行馬がいて、被されたり、接触されたりしては元も子もないですもんね。
みねた)そういうことです。大外枠であれば片側に馬が存在しないので、スタート直後に被せられたり、接触されたりするリスクが単純に1/2になります。こうした小さな積み重ねが重要で、この考え方は対抗評価した7タケトンボにも通じています。
―このレースは8番人気で勝利したタケトンボを高評価したのもポイントだと思っていました。その思考を教えてください。
みねた)そもそも、現級で3着、3着ときている馬が8番人気という時点で、深く考えずとも期待値はありましたよね。それに加えて“並び”です。先行馬が2、3、4、5ときて、一つあいて7番がタケトンボでした。この「一つあいて」が大きいんです。
―「並びではない」ということですか?
みねた)そうです。隣同士と「一つあいて」では、接触のリスクが全然違いますからね。仮に、隣同士ではないことでぶつかる確率が10分の1になるとしたら、それはもの凄く大きな差じゃないですか。100分の1だとしても、ハナ差を競う競馬の世界では大きな数字です。タケトンボの単勝は約17倍だったので、5.9%の確率で勝てばプラス。スタート直後の接触が響いて負けるケースが1%あるだけでも全く収支は変わってきますよね。
―「5.9%以上の確率であれば期待値がプラス」だと考えたら、枠の並びで勝率が1%変わるとしたらものすごく大きいことを実感できます。
みねた)正確なスタート直後の接触確率はわかりませんが、それがレース結果に影響を与えているのは間違いないので、そのリスクを1%でも減らせる要因は追求するべきでしょう。結果的にスタート直後に接触があってハナ差負けしたレースであれば、その接触がなければ勝っている可能性は極めて高いわけですから。
―「不利を受けて競馬にならなかった」というパターンばかり思い浮かべがちですが、実際は、「スタートで少し寄られて手綱をひいたために0.1秒分のロスをした」というケースもありますもんね。
みねた)スタート直後の不利というのは見過ごされたり、小さく見られがちですよね。NHKマイルCにおける川田騎手のルメール騎手へのブロックであったり、ヴィクトリアマイルにおけるマスクトディーヴァとドゥアイズの接触など、直線での攻防は目立つから「閉められていなければアスコルピチェーノが勝っていた」とか「あの不利がなければマスクトディーヴァが勝っていた」という意見が出てきやすいですよね。
―確かに、スタートで接触した馬が追い込んで4着だったとしても、そもそも観ている側は接触に気づいていないことも多いし、「あと少しで3着だったのに惜しかったな」ぐらいの感想で終わってしまうかも。それこそ、直線で隣の馬がタックルしてきたら大騒動になるけれど、スタート直後の接触だと、不可抗力だとみなされがちですよね。
みねた)いまだに2012年のジャパンカップの岩田騎手は話題にのぼりますよね(ゴール前で岩田騎手騎乗のジェンティルドンナがオルフェーヴルにぶつける形で進路を確保した)。スタート直後に、同じように隣の馬と接触するケースは山ほどあって、それがレースの結果に影響を与えているのも間違いありませんが、ほとんど話題にはなりません。言うなれば、スタート直後の接触は「目立たない不利」で、期待値の観点でいえば、こちらに着目する方がメリットが大きいというのは、もう、ご理解いただけますよね?
―これだけみねたさんに話を聞いていたら、もちろんわかりますよ。目立たない方がオッズに織り込まれない、ですよね。
みねた)そうです。◎14ヨウシタンレイにしても○7タケトンボにしても、「スタート直後にタックルされにくい並びである」というアドバンテージに目をつけて買っている人はほとんどいないでしょうからね。