プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“先行昇級馬が逃げられた理由”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
6月29日 函館11R 函館記念 芝2000m
函館記念は函館芝2000mで施行。初角となる1コーナーまでは400m以上あるので、先行争いによる内外の有利不利は考えなくてよいでしょう。
登録15頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは5頭。先行馬占有率33.3%なら標準的で、脚質な有利不利は小さそう。無難に好位を取れるタイプにアドバンテージがあるとみます。
1番人気想定はハヤテノフクノスケ。前走の天皇賞(春)では11着に敗れましたが、その前は強い内容で2勝クラス、3勝クラスを連勝していました。ただ、その2戦は2200m、3000mでのもの。2000mの実績があるとはいえ、2000mの重賞で通用するかは未知数です。軸というよりは頭に妙味があるタイプだと思いますが、今回、想定4.3倍で期待値が取れるかは微妙なところ。
2番人気想定はマコトヴェリーキー。近2走はG2で3着、2着と善戦しています。安定感のある走り、裏を返せば可もなく不可もなく、という走りなので、こちらはハヤテノフクノスケとは対照的に、頭よりも軸に向くタイプでしょう。
3番人気想定はマイネルモーント。前走のG2金鯱賞は7着止まりでしたが、3走前には中山金杯で2着しており、ハンデG3なら通用する下地はあります。ただ、3番人気になるほどの実績かと問われると疑問で、相手関係次第といったところ。
4番人気想定はアルナシーム。中京記念、中山金杯を勝っています。気分良く捲れる相手には好走し、強い相手には為す術もなく大敗する、相手関係に左右されるタイプ。ここも気分良く捲り気味に4コーナーを迎えられればチャンスは十分あるでしょう。2走連続の二桁着順と、今回、期待値を積んでいそうな臨戦過程でもあります。
5番人気想定はディマイザキッド。2連勝後に重賞で敗退という臨戦過程はハヤテノフクノスケと似ています。ただ、こちらは前走がG1ではなくG3。その分、想定オッズは9倍台になっていますが、このオッズでも期待値があると判断できるような買い材料は見出せません。
6番人気想定はヴェローチェエラ。デビュー戦が3番人気、そして2戦目以降は全て2番人気以内に支持されていたことを思うと、今回は人気が急落しています。前走オープン6着敗退が効いているのでしょう。3走前にG2日経新春杯で1番人気に支持されたほどの馬なので、人気的には今回が“買い”のタイミングといえそう。
リピーターに注目するならグランディア。昨年の2着馬です。その後の3戦は馬券になっていませんが、0.4秒差・4着、0.6秒差・7着、0.3秒差・5着と期待値を積んでいそうな負け方。穴馬の資質は備えています。
一長一短というメンバー構成だけに、最終オッズが大きな鍵を握る一戦。枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言187
先行昇級馬が逃げられた理由
★ピックアップレース★
6月7日東京11R 麦秋S ダート1400m良
◎15サフランヒーロー
○7スタンリーテソーロ
▲16ペプチドタイガー
△10プロミシングスター
☆12ヘルモーズ
注9ヒルノドゴール
注14エコロアレス
―今回は6月7日東京11Rの麦秋Sを取り上げます。◎サフランヒーローが逃げ切り、▲ペプチドタイガーが2番手から2着という行った行った決着で、単勝8.7倍、ワイド10.1倍、馬連31.8倍、馬単60.7倍的中となりました。伺いたいのは◎で、ローカル新潟の2勝クラスを勝っての昇級戦。2番手からの抜け出しですから、いわゆる先行昇級(編注:みねた氏の予想理論では、前走3番手以内から抜け出した昇級馬は基本的に期待値が取りにくいという考えている)です。これは買いにくくないかなと。
みねた)買える買えないはもちろんオッズ次第なのですが、昇級先行は基本的には買いにくいのは事実です。今回狙った理由の一つは当然、展開面ですよね。ほぼほぼこの馬がハナを切ると思っていたので。
―それはメンバー構成の問題ですか?
みねた)メンバー構成と並びと臨戦過程、全てですね。
―それぞれ順を追って説明していただけますでしょうか?
みねた)まずは基本中の基本、先行馬占有率の問題です。このレースで前走の通過順に3番手以内があったのは10プロミシングスター、15サフランヒーロー、16ペプチドタイガーの3頭でした。先行馬占有率は19%ですから、3勝クラスのダート短距離戦であることを考えると低く、前有利の展開が濃厚でした。
―実際、道中二桁の通過順位だった馬は掲示板にも載れず、典型的な前残り決着となりました。
みねた)並びも特徴的でした。前出の先行候補の3頭は10番、15番、16番でした。これを「先行馬以外」の視点でみるとどうなりますか?
―えーと、1~9番、11~14番が「先行馬以外」ということになりますね。
みねた)これまでの連載でも何度も触れていますが、「同脚質並び」は不利に働きます。先行馬が並んで入ったことによる逃げ争いでの消耗ばかりがクローズアップされがちですが、ポジション争いが起こるという意味では先行馬以外も同じ。このレースの場合、外から先行馬が被せ気味に先行すると、内の差し馬たちは押し込まれる形でごちゃつく公算が大。内から差そうとしたら不利を受ける可能性が高そうだと予見できました。私が外枠の馬中心に印を回したのは、この並びの影響が大きいですね。
―臨戦過程についてはいかがでしょうか?
みねた)先行候補3頭を比較すると、10プロミシングスターと16ペプチドタイガーが同距離ローテ(1400m→1400m)であるのに対して、15サフランヒーローは距離延長ローテ(1200m→1400m)でした。また、斤量を比較すると16ペプチドタイガーが前走比1キロ減(58キロ→57キロ)、10プロミシングスターが前走比2キロ減(58キロ→56キロ)、そして15サフランヒーローは前走比3キロ減(58キロ→55キロ)でした。
―距離、斤量ともに15サフランヒーローに追い風が吹いていますね。
みねた)これらを総合すると、ほぼ間違いなく15サフランヒーローがハナを切るだろうと考えました。先行昇級馬が期待値を取りにくい最大の理由は、クラスが上がることでそもそも前に行けない可能性が高い点です。金言8「逃げた時点で展開に恵まれている」で話した通り、逃げてしまえば、その時点で最も展開に恵まれる馬になるので、先行昇級のマイナス点は消えていることになります。
―結果的に1番人気に推されていた、同じ先行昇級の10プロミシングスターは道中7番手と先行することができずに、馬券外に沈みました。
みねた)ダートでは砂を被りにくい外枠自体にアドバンテージがありますし、15番枠の馬が逃げれば、16番もついていく形でスムーズに流れに乗れます。15番が逃げると予見できれば、この印の組み方、決着は納得でしょう。そしてこの馬がハナを切れた要因の一つとなった「斤量」というのは面白いテーマなので、次回、少し掘り下げてお話ししたいと思います。
(次回に続く)