『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは「競馬の結果を決める能力」です。ぜひお楽しみください!
「競馬なんて考えても当たらない。まじめに考えるだけ無駄だよ」
これは私がもっとも嫌う考え方です。明らかな間違いです。
競馬がなぜ楽しいか。それは、正しい筋道(すじみち)で考えれば考えるほど、正解にたどり着く確率が上がり、ご褒美としてお金がもらえるからです。競馬は正しく考えれば、勝てるようになる。勝てない人は、正しく考えていないからです。
「こっちは趣味でやってるんだから、勝てなくてもいいんだよ。馬を見てるだけで楽しいんだから」
この考え方は否定しません。競馬の楽しみ方は人それぞれであり、馬券に執着する人もいれば、馬を応援することに楽しみを見出す人もいる。
でも、こんなコラムを読んでいるのはほとんど、できれば馬券で勝ちたい人の集まりでしょう。勝てなくても、せめて負けないくらいには馬券力を上達させたい。馬券で負けてばかりでは、好きな馬の応援馬券も買えないし、一口クラブに出資もできない。
馬券のコツを、単純化する考え方も好きではありません。「血統さえ覚えれば、馬券で勝てるようになるぞ」「パドックや調教で馬の体調を見抜くことが、勝利者への唯一の道だ」「競馬でいちばん大事なのは展開だ」。そのような一点突破のやり方が有効になることもあるでしょう。しかし、最初からそれをやるべきではない。
なるべく多くのファクターを、バランス良く、正しい考え方で総合的に取り入れること。これが馬券で利益を出すために大切な、最初に心がけるべき手堅いアプローチです。そこから先へ進む段階で、自分に合うファクターを掘り下げていけばいい。
私も今では血統の専門家のような扱いをされていますが、最初に出した馬券術の本では、騎手や調教師などの「人間」に注目する章が前半で、血統に注目する章は後半でした。
私が馬券で勝つことにこだわるのは、それが競馬をより深く、より長く楽しむことにつながると信じているからです。
競馬というのは広大な海のようなもの。馬の写真を撮ったり、馬を「推し」のように応援するのも楽しいけれど、それだけでは競馬の奥深い領域に触れられない。目の前に大きな海が広がっているのに、浅瀬でちゃぷちゃぷと遊んでいるようなものです。本当の海の奥深さ、美しさ、怖さは、テトラポッドの向こう側へ行ってみないとわからない。見えてこない。
せっかく目の前に海があるのなら、とりあえず一度、もぐってみようではありませんか。もぐった後で、自分は浅瀬で遊ぶのがちょうどいいと引き返すならそれでいい。でも、一度ももぐらずに浅瀬で遊び続けるのは、もったいなさすぎるし、競馬の奥深さを知らないまま終わってしまう。
競馬のシステム上、競馬ファン全員が馬券で勝つことは無理です。しかし、こんなコラムを熱心に読む貴重な少数派は、せいぜい競馬ファンの1%でしょう。そのくらいの割合なら、全員が勝てるようになる余白はある。
本コラムの読者が全員、勝ち組に回る可能性はゼロではないし、そうなって欲しいと本気で思っています。
偉そうなまえがきが中途半端な分量になってしまったので、以下、大事なポイントを。