プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“重賞で期待値がとりやすい理由(後編)”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
6月30日 小倉11R 北九州記念 芝1200m
今週から夏競馬が開幕。北九州記念は、初角となる3コーナーまでは400m以上あるので、先行争いにおいて内外の有利不利はありません。
登録はフルゲートを大きく超えていますが、最終的に前走の通過順位に3番手以内がある馬は7頭出走となりそう。先行馬占有率は40%弱と微妙なラインです。
ただ、その中でもピューロマジックとジャスパークローネはともに引かないタイプで、想定ではこの2頭が1、2番人気となっています。人気馬2頭がバチバチやりあえば、2頭が共存する世界線は想像できません。現実の競馬はダビスタのように2頭が引き離して画面から消えるようなことはありませんから(笑)。
1番人気想定のピューロマジックは前走の葵Sを逃げ切り。デビュー3戦目以降ハナを譲っておらず、速力はかなりのものを秘めています。
2番人気想定のジャスパークローネのスピードも誰もが認めるところで、このメンバーなら格上の存在。
ともに2番手に控える形になると厳しいので枠並びが鍵を握るでしょう。2頭が離れて配置された場合、内を引けた方に分がありそうです。
個人的には、ジャスパークローネの58.5キロが嫌われるようであれば、期待値が見込めそうな印象を持っています。
3番人気想定がナナオ。2走前にはピューロマジックに先着し前走の葵S(3着)は0.2秒差でした。前走同斤量から今回はピューロマジック53キロに対してナナオが52キロと1キロ貰う形になります。脚質的にも前をいく逃げ馬を目標に競馬できそうで、想定通りの8.2倍なら、ピューロマジックよりも期待値があるのでは。
葵Sで0.2秒差の2着だったのがペアポルックス。この馬も前走57キロから54キロになり、ピューロマジックとの斤量差が1キロ縮まります。逆転があっても不思議ではありません。3歳馬の最終的なオッズは読めませんが、想定オッズ通りなら、こちらも期待値はありそうです。
前2頭が飛ばす展開で追いかける組も苦しくなると捉えれば、6~10番手ぐらいの差し馬に目が向きます。そこに収まりそうなのがバースクライ。前走はG3を7番手から差して3着、9-11から伸び返して0.9秒差だった2走前も悪くありません。
カンチェンジュンガは前走8-9から差してサトノレーヴと0.2秒差。サトノレーヴは続く函館スプリントSも完勝しています。据え置きの55キロは相対的に甘い印象で、想定オッズ(28.2倍)通りならかなり楽しみな存在。
ヴィクトリアマイルで0.5秒差・5着があるサウンドビバーチェは格上の存在。1200mは初めてになりますが、先行激化のタフな流れなら短縮ローテは悪くありません。想定13番人気と全く人気がありませんが、十分にチャンスはあるとみます。
展開面は向きそうにありませんし、ここでハナを切るのは難しいとは思いますが、テイエムスパーダも単勝期待値はありそう。セントウルSが14番人気での逃げ切りという「やるときはやる女」です。
フルゲートで激戦必至の電撃戦。しっかり枠と並びを見極めて、夏の花火を打ち上げたいものです。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言136
重賞で期待値がとりやすい理由(後編)
★ピックアップレース★
6月9日 函館11R 函館スプリントS 芝1200m
◎13ビッグシーザー
○10ウイングレイテスト
▲4サトノレーヴ
△14セッション
☆11ジャスティンスカイ
注6シナモンスティック
[参考買い目]
単勝 13
ワイド 13-10.4.14
馬連 13-10.4.14
3連複 13-10.4.14-10.4.14.11.6
―今週も6月9日に行われた函館スプリントSを取り上げます。▲○◎で決着し、参考買い目はワイド6.5倍&21.1倍、馬連34.7倍、3連複70.8倍の的中となりました。前回は◎ビッグシーザーの理由を伺ったのですが、簡単に復習しておくと、「重賞はステップレースが多岐にわたるので“実績の割にオッズが甘い”という現象が起こりやすい」ということでした。
みねた)そうです。このレースで重賞未勝利かつOPからの格上げ戦だったアサカラキングが2.3倍の支持を集める一方で、ビッグシーザーは高松宮記念0.9秒差・7着からの臨戦。言うまでもなく高松宮記念は現役トップクラスのスプリンターが集結した一戦で、好位から1秒以内に踏ん張り、ママコチャ、メイケイエール、ルガルらに先着しているのは立派ですが、どうしても「7着」という数字の部分でオッズは作られてしまうんですよね。高松宮記念の部分を隠してみると、淀短距離S1着→オーシャンS2着になって、このステップなら7.6倍もつくなんて考えられないでしょう。こういう実績とオッズの乖離が起こりやすいのが重賞戦で、ステップのバラつき、能力のバラつきの少ない条件戦とは違います。「条件戦と重賞戦では予想方法自体が変わる」という言い方もできるかもしれません。
―今回は対抗評価で2着だった10ウイングレイテストについて解説していただけるということでした。この馬にも重賞特有の期待値が取れる要因があったとか?
みねた)そのお話をする前に…さきほどのステップの話は10ウイングレイテストにも当てはまりますよ。この馬も前走は海外の1351ターフスプリントで4着。その前が阪神Cを0.3秒差・8着。そしてその前の2走がスワンS1着、京成杯AH2着です。仮に直近2走を隠してみればG3戦2着→G2戦1着のステップですから、単勝18.5倍もつく馬ではありませんよね。阪神Cもハイペースの逃げを打って0.3秒差ですから、全く悪い内容ではありません。いかに「前走海外」とか直近の馬柱に記された「8着」という数字が、ファンの判断を鈍らせているかが窺い知れますよね。
―実は、金言127「前走海外の取扱説明書」、金言32「競馬で勝ちたければ、4と6を意識しろ」、金言9「前走僅差の6着以下」といった、期待値が積まれる要素が詰め込まれていたということですか。そう言われると、実績に対して18.5倍は甘過ぎますね。
みねた)さらに、この馬のオッズを甘くさせたのが斤量の59キロでしょう。これが、予告していた「重賞特有の期待値が取れる要因」です。
―確かに条件戦で59キロという斤量は滅多にみかけません。
みねた)数字というか字面自体にインパクトがありますよね。だから必要以上に「酷量」と判断されて、評価を下げてしまう人が多いのです。
―それはわかる気がします。今回の10ウイングレイテストも、「海外帰り」「初距離」という判断のつかない未知の要素があったので、ついつい59キロを理由に消してしまいそうだなぁと。
みねた)そういう側面もあるでしょうね。もちろん斤量が重くなるほど競走面で不利であることは間違いありませんが、「好走率の低下以上にオッズが甘くなる」というケースが多いので、馬券的には一概にマイナスとは言えないのです。
―気になって調べてみたところ、2023年のOP以上のレースで斤量「55.5~57キロ」と「57.5~59キロ」を比較してみても、複勝率21.3%と20.9%なので、斤量が重くなってもほとんど好走率は下がっていませんね。そして「59.5キロ~」は複勝率23.5%、複勝回収率が167%もありました。17回出走して2着2回3着2回とサンプル数は少ないのですが。
みねた)59.5キロとか60キロだと無条件切りしてしまう人も多そうですからね。いずれにせよ、斤量に関しては、「軽いからいいかも」と考えるのは良いですが、「重いから消し」は避けた方がいいでしょう。